《でも、それが私なりのケンカしない、ぶつからない秘訣になっていたのかもしれません。夫婦として家族として生きていくうえで、やっぱりこんなユーモアが一番大事だなぁと思うんです。つらいことも深刻なことも、人生にはもちろんあるけれど、それでも、笑いに包まれて笑顔で歩いて行くのがいいなぁって》

 そんな最愛の夫と過ごした八千草さんの自宅。東京都内にある150坪の土地と邸宅、そのすべてが先ごろ売却されてしまったという。

「あのご自宅はご主人と結婚されてすぐに建てたんです。当時、周りにはほとんど住宅もなくて、畑と大きな公園だけでのんびりした場所だったのを、自然が好きな八千草さんとご主人が気に入って。新築時に庭に植えたケヤキとヤマザクラの木は50年の間にどちらも立派になって。その木陰には、スズメやメジロといった小鳥たちがたくさんやってきては、1日中にぎやかにさえずっていたんですが……」(当時を知る知人)

 前出の著書にも登場する庭と、そこを眺める自宅1階のサンルームは八千草さんのお気に入りの場所だった。

「サンルームは山好きだったご主人のために“山小屋のような雰囲気に”と考えて、後から増築したんだって聞きました」(前出・知人)

家をさっぱりなくしてほしい

 10月中旬、週刊女性が現地を訪ねると自宅の解体が始まっていた。八千草さんが大切にしていた庭の木々にも、できたばかりの痛々しい傷が……。

“私がいなくなったら、この家はきれいさっぱりなくしてほしい”というのは、実は八千草さんご自身のお考えでした。常々“最後はすうーっと終われればいい”とおっしゃっていたんです」

 売却理由をそう語るのは八千草さんの事務所関係者だ。

「80歳になられてすぐのころに“遺言状”を作っていたんです。家のことだけでなく家財道具もすべて、ひとつひとつご自分で“形見分け”する方を決めていました。大切に飼っていたワンちゃんと猫ちゃんも、知り合いの方に“私に何かあったら頼みます”と、きちんとお願いして行き先を決めていましたから」

 自分がいなくなった後、“残された人たちが困らないように”という思いがあった。

“こういう最後を迎えたいということも書き残しておきたい”と常々おっしゃって。八千草さんにはお子さんがいらっしゃらなかったですから、ご主人を亡くされてからは、ずっとおひとりでしたのでね。いざというときのことを、いつも気にかけていました」

 長年、彼女を支えてきた事務所社長が成年後見人となり八千草さんの親戚を含めた3名が相続人になった。