結婚も離婚も、幸せになるためにやること
「少し前に雑誌の企画で検査したんだけど、俺は精子の数が5億7000万個あったんですよ。普通は1億から3億が平均で、妊娠に必要な最低限が3900万以上なんだそうです」
これも自慢ではなく、雄としての自信のようだ。
と、そこへ三女の詩美さんがやってきた。彼女はプロレスラーとして今かなりの注目と期待を集めている。その日も試合を終えての帰りに、ダディの店に立ち寄ったのだった。もちろん、その試合では勝利していた。
疲れ切っていながらも、姉妹の子たちの世話もしている。ダディも、店に飾られたトロフィーなどを指し、スマホに収めた華麗なコスチューム姿の詩美さんを、がんばってくれていると見せてくれ、目を細める。
プロレスで活躍できるほどの恵まれた肉体、それはもちろん本人の精進の賜物でもあるが、ダディの小麦粉とめんつゆ料理で作られていると見ればますますまばゆい。
ダディの子は全員、小麦粉の中から四つ葉のクローバーを見つけたんだな。
ダディは誠に、強い人である。幸せになる自信というのは、強くなきゃ持てないものだ。
美奈子は負けず嫌いなだけで、本来は弱い
私も勘違いしていたが、ダディの二番目の奥さんである美奈子さんも、一見すると強そうに見える。
「美奈子は負けず嫌いなだけで、本来は弱いんです。それを認められたら、楽になれるし、本当に強くなれるはず。でも、強くなくていいんですよ。あいつがあいつらしくあってくれれば、それでいい」
番組終了直後、ダディは『ビッグダディの流儀』(主婦と生活社)という本を出して、ベストセラーにもなった。それはもう本当にダディが身体を張って得た教訓と人生の処世術と楽しみ方が詰まった、お勧め本であるのだが、
「俺には“理想の女”っていうのがないんです、誰でもいいというと変だけど、基本は“俺といることを楽しんでくれる人”なら誰でもいい。『もう、楽しくなくなった』と言われたら俺も興味がなくなるし、去る者を追うつもりもありません」
という一節は、長年の心の靄(もや)をすっきり取り去ってもらえた。
みんな恋愛や結婚の相手に限らず、理想の人を求めて与えられないと苦悩することが多い。そりゃ、現実と理想は違うものだし。他人である相手が、自分の理想や希望どおりに動いてくれるわけもない。
逆に自分も相手の理想どおりになどなれない。理想どおりになろうとする苦悩、というのもある。いや、それはいらないよといってもらえたら、なんて楽になれることか。
一緒にいて楽しい。これほど大事なことがあるものか。