後を絶たない、新生児遺棄事件。その時、罪に問われるのは、必ずと言っていいほど母親となる女性側。だが、子どもは一人では作れない。当然、父親となる男性にも責任があるはずだが、彼らが逮捕されることはほとんどない。先日公開され、反響を呼んだ記事『新生児遺棄事件、責任を負わない “父親たち” が犯した「罪にならない大罪」』。「こういう記事を待っていた」という傍聴人でフリーライターの高橋ユキさん。数多くの事件を取材してきた高橋さんに、これらニュースへの思いを聞いた。
「トイレで出産」「逮捕」……こんなワードでネット検索をかけると、いくつものニュース記事がヒットする。
それらの多くが、コンビニや自宅、またはバーなどのトイレで出産し、そのまま赤ちゃんを放置して立ち去った女性や、ロッカーに入れて立ち去った女性、あるいは産んだばかりの赤ちゃんを窓から投げた女性たちが、殺人未遂や保護責任者遺棄などの容疑で逮捕された……というものだ。
責任を問われない父親
昨年1月に、埼玉県新座市のコンビニの個室トイレで女児を出産し、そのまま立ち去った20代の女性は、同年4月に殺人未遂容疑で逮捕された際「一人では子どもを育てられないし、妊娠したことを親に告げていなかった」と理由を語っていた。
また同年10月に殺人容疑で秋田県警に逮捕された当時19歳の少女は、5月に自宅のトイレで出産した男児を、トイレの窓から投げ捨てていた。この少女については「個人の特定につながる」として夫がいたかどうかなど、詳しい事情は明らかになっていない。
今年の4月には、神戸市のバーのトイレで女児を出産し、放置したとして26歳の女性が殺人未遂容疑で逮捕された。調べによると、女性はトイレで1時間ほどかけて女児を出産。次にトイレに入った客が、産まれたばかりの女児を見つけたという。「殺すつもりはなかった」と否認している。
こうして逮捕された女性たちはのちに起訴され、ときに有罪判決が下される場合もある。子どもを産み、捨てた罪を背負うことになるのだ。しかし子どもは女性一人で作れるものではない。性行為の結果、妊娠に至ったのであるから、子どもの父親となる男性が必ず存在する。しかし、彼らの責任が問われることはない。
責任を取り、罪を背負うのは、子どもを産んだ女性だけであり、報道により社会的制裁を受けるのも女性だけだ。父親である男性の存在は報じられない場合も多い。
一方、女性側が赤ちゃんを産み捨てて逮捕された際の報道では、その場所や日時などは大まかに明らかになるが、どういった事情から産み捨てることになったのかは、報じられることはほぼない。また、未成年だった場合は氏名も明らかにならないために、後日開かれる公判の予定も把握しづらく、取材することは非常に難しい。
そんな事情はあれど、新聞やテレビでの第一報が出れば、近所や友人知人の知るところとなり、匿名掲示板に実名が書き込まれたりもする。それを見つけるやいなや、トレンドブログで記事が量産され、女性の名前や顔、SNSも、憶測で発信される。だがそこにはやはり、赤ちゃんの父親である男性の情報が出ることはない。