社長が各店舗のライングループに参加
ところが'18年3月の最初の決算が予想以上に悪かった。居酒屋2軒を成功させてきた経営者目線で見ると「これはまずい」と、深刻にならざるをえない状況だったという。そこで悩みに悩んだ末、藤崎さんは本部に電話をかけて、役員にこう告げた。
「意見の言える立場にしてください」
1か月後、本部に呼ばれた彼女は2人の役員から驚くべきことを言われた。
「取締役になってください。ついては代表取締役です」
まさに青天の霹靂だった。
「前社長が辞任され、部長以上も全員降格。グループ会社への出向も含め大幅な人事異動により、SVは東西で2人だけに。そのうえで、私が東日本担当SV兼社長という大役を託されるというので驚きました。ただ、自分から意見の言える立場にしてほしいと言った以上、逃げることはできない。覚悟を決めました」
社長となった藤崎さんは「ドムドムらしさ」にこだわりながら、メニューの刷新を図った。
定番である「甘辛チキンバーガー」(350円)や「お好み焼きバーガー」(370円)を残しつつ、「カマンベールチーズバーガー」(999円=現在は販売終了)、「丸ごと!!カニバーガー」(999円)などの斬新なメニューを相次いで投入。特にカニ1杯を丸ごと使用したバーガーはSNSで話題になり、今年9月から再販、大ヒットを記録している。
仕掛け人である浅田さんは、藤崎さんに背中を押されたのが大きかったと話す。
「“思いついたんだから、やろう”と社長が言ってくれて、勇気が湧きました。カニの水をきって、粉をつけて丸ごと揚げるというのは意外に難しい。バイトの教育もしなければいけなくて負担のかかるメニューなんですが、藤崎さんがスタッフとの意思疎通を大事にしてくれているので助かります。社長は各店舗のライングループに参加して、暇を見つけてはメッセージを送っているんです」
“これはよかったね”“ありがとう”。社長から直接ねぎらわれたら、スタッフはみんなうれしい。
「天才的な褒め上手です(笑)。現場を大事にしている気持ちも、よく伝わってきます」(浅田さん)