視聴者が振り向くには?
「ひとつは“放送枠の問題”です。どうしてもドラマで数字がとれない時間帯というのがあるんです。例えば、今はなくなってしまいましたけど、TBSが『月曜ミステリーシアター』というドラマ枠を月曜20時台に作っていました。
宮部みゆき原作の『名もなき毒』や、薬丸岳原作の『刑事のまなざし』といった面白いドラマをやっていまして、内容も悪くなかったんですけど……。なぜか視聴者がつかなかったんです。ドラマを見る層がテレビの前に座らない時間帯なんでしょう。もしくはバラエティーや情報番組に流れてしまっているのかもしれません」
ドラマを放送するには適さない“谷間の時間”ということなのか。2つ目の条件として、出演者のキャスティングをあげる。
「ジャニーズのアイドルたちの使い方ですね。刑事ドラマを見る人たちって、年配の方が多いじゃないですか。何十年も警察モノや刑事モノを見てきたファンにとって、目が肥えているというか純粋に面白いドラマを求めているわけです。別にジャニーズのタレントさんたちがダメというわけではありませんが……」
彼らのような20代前半の子が大活躍する刑事ドラマでは、確かに説得力が少ない。
「この前のクールで放送していた『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)は『Sexy Zone』の中島健人と『King&Prince』の平野紫耀が主演しましたが、平均視聴率が11%。今をときめくアイドルが出演しているなら、もっとよくてもいいはず。ファンとストーリーを楽しみたい層とは違うわけです」
そして、3つ目にあげた条件が“地味すぎる”こと。これは2つ目の条件と相反するように思えるが──。
「どれだけいい役者をキャスティングしても、地味すぎたり硬派すぎるとダメなんです。以前、今野敏が書いた警察小説の『隠蔽捜査』なんて本当に面白いストーリーだけど、TBSでドラマ化したときのキャスティングが杉本哲太と古田新太。おじさんしかいないわけです。
ちなみにこのドラマは、『月曜ミステリーシアター』の枠でした(笑)。だから、キャスティングには絶妙なバランスが必要なんですよ。2つ目と3つ目の条件をうまくブレンドできれば、マイナスがプラスになると思います」
そのいい例が、シリーズとして12本続いた『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日系)だという。
「渡瀬恒彦さんとイノッチこと井ノ原快彦のコンビがすごくバランスがよかったんです。そして、ふたりの周りに吹越満や田口浩正、津田寛治、羽田美智子といったなかなかの手だれ俳優を置いて。
渡瀬さんの役が空気を読まない係長で、そのサポート役がイノッチ。数字もとれて長期シリーズになったのですが、渡瀬さんが亡くなり、イノッチがリーダーになってしまった。しかも『特捜9』とタイトルまで変わってしまって、今は別ものになってしまったんですけど」