「生涯恋愛」を叶えてくれる
柴門ふみ原作のドラマ
原作は漫画家・柴門ふみ。言わずと知れた『東京ラブストーリー』(フジテレビ系、1991年)の原作者である。
『東京――』はヒロインの赤名リカ(鈴木保奈美)が「ねぇカンチ、セックスしようか」という名言を残したが、『恋する母たち』にも同じ臭いを感じさせるセリフがある。
「人は怒ると性欲が高まるらしい」
「それは恋っていうより性欲じゃないかしら」(ともに杏)
柴門ワールドにおいて恋愛とセックスは切り離せないようだ。「枯れてはいけない」と呼び掛けられている気になる。実際、彼女は作品の上では「生涯恋愛を」と唱え続けてきた。
23歳だった1980年には浪人生と女子大生の恋を描いた傑作『P. S. 元気です、俊平』(ドラマ化はTBS系、1999年)を発表。31歳の1988年には『東京ラブストーリー』を作品化した。これが若手サラリーマンと帰国子女の恋愛を題材にしていたのは知られているとおり。
以後も恋愛漫画のメーンストリームである学生や若い独身男女の恋を描き続けるのかと思いきや、37歳だった1994年には『Age,35(ドラマのタイトルは「Age,35 恋しくて」)』(ドラマ化はフジ系、1996年)を世に放つ。35歳の人妻の不倫が題材だった。
まだ終わらない。54歳だった2011年の時には『同窓生〜人は、三度、恋をする〜』(ドラマ化はTBS系、2014年)を発表。同窓会で再会した40歳男女の恋模様をリアルに描写。やはり不倫も込みだった。
自身の年齢が上がると、作品の登場人物たちの年齢も上昇させた。まるで「自分たちの年代こそ人生のクライマックス」と唱え続けるかのように。それでよかったのだろう。だからこそ、どの作品にも活力や瑞々しさがある。
そして今度は60歳だった2017年から執筆した『恋する母たち』で母たちに恋をさせた。気の早い話だが、いずれはシルバー層の恋物語を描いていただき、どこかの局でドラマ化してもらいたい。
人生100年時代なのだから。
高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立