そしてコロナ禍になって、さらに現実は厳しい。
「ホームレス状態にある人は圧倒的に都会で暮らしていますが、家がないぶん、都市のさまざまな機能に依存して生きています。たとえば図書館は昼間の居場所にして、パソコンを使って情報を収集しています。また『ビッグイシュー基金(ホームレスの人たちを中心に困窮者の生活自立を応援するNPO法人)』の作った『路上脱出 生活SOSガイド』を置いているところもあるので、そういうものを手にできる場所にも依存しています。ところが、緊急事態宣言下では休館になってしまい、行き場を失いました」(稲葉さん)
女性の自殺者が急増
感染が急増している今、再び閉鎖などが起こると冬の寒さの中で行き場を失う人が出てしまう危惧がある。また、居場所だけでなく、お財布には残金が数十円で食べることができない人もどんどん増えている。
「コロナ禍による経済危機が長期化しており、炊き出しに集まる人も徐々に増えていますね。池袋でTENOHASHI(ホームレス支援団体)が開く炊き出しには、10月以降、通常の1,5倍の人が並ぶようになりました。通常180人ぐらいが、270人を超えています。年末に向けてさらに増えていくことが懸念されています」(稲葉さん)
さらに今、問題になっているのは女性の自殺の急増だ。
「この10月は、女性の自殺が去年の10月と比べて80%以上も増えて851人になりました。11月はさらに増えてしまうかもしれません。女性は一人で悩んでアパートの部屋にこもりがちで、これまでも
女性は飲食業やサービス業にパートやアルバイトなどの不安定な立場で就いていることが多く、コロナ禍にあってそうした業種が軒並み閉店や倒産に追い込まれ、補償もないままに退職せざる得なくなっている。
「昨年も『助けて!』の声をなかなかあげられず、路上での炊き出しなどには行けない女性たちにも来てほしいと、料理研究家の枝元なほみさんが料理を作る『年越し大人食堂』を開きました。安心して食事をして、相談ができる場所です。今年もコロナ禍での開催を計画中です」(佐々木さん)
急激に生活困窮に追い込まれ、ホームレス状態に陥る女性たち。16日には東京・渋谷区のバス停のベンチに座っていた路上生活の女性が、50~60代とみられる男性に殴打されて亡くなった。女性は夏以降、毎日夜遅くバス停に来てベンチで寝て、早朝に立ち去っていた。街の人たちは女性を心配してお茶や飲み物を渡そうとしていたものの、女性は申しわけなさがって、「ごめんなさい」と辞退することもあったという。「助けて!」の声をあげられない女性に、最悪の結末が訪れてしまった。
ホームレス状況にある人たちの生活はどんどん大変さが増している。もっと言えば、ほとんど公的な援助を受けることができない技能実習生として日本に来たような、外国籍の人たちの暮らしは壊滅的に厳しい。今回の炎上に違和感を抱いた多くの人たちには、ぜひ手を差し伸べてほしい。『つくろい東京ファンド』や『TENOHASHI』など支援団体のホームページにいけば1回1000円から寄付も可能だ。またホームレス状況の人を見かけたら、声をかけたり、支援団体に連絡をするのも助けになる。ホームレス状況にある人たちに関心を! 炎上を逆にチャンスにして、そうしたムードが盛り上がってほしい。
〈取材・文/和田靜香〉