もし太賀が事件を起こしたら?
太賀と同世代の俳優たちとの交流もあるという中野は、お茶目な思い出話をしてくれた。
「高校生のころは、菅田将暉くんや間宮祥太朗くんたちが家によく遊びに来ていました。ずっとゲームをしているもんだから、“うるせー! 静かにしろ! 何時だと思ってんだ!”って怒ることもしょっちゅうでしたね(笑)。
でも、確か1年くらい前かな、また菅田くんがうちに来てたんです。トイレに行こうと廊下の角を曲がった先に彼が座っていて、“わっ菅田将暉だ!”って驚いちゃいました。スターに会った気分になって、ドキドキしながら“どうも、こんにちは!”って頭下げてあいさつしたら、“もう、やめてくださいよ(笑)”なんて言われてね」
俳優業には口を出さず「太賀の世界を作ってほしい」と言いながらも、息子が窮地に陥ったら「親としては全力で守る」と、力強く語る。
「若いころ、松方弘樹さんが僕をご飯に連れていってくれたときに“世界中の誰もが敵になっても、俺は息子の味方だ”って言われたんです。当時は“このオヤジ、カッコつけてるな”くらいにしか思わなかったけれど、親になった今、実際にそうでなきゃなって感じるようになったんです。
だから、もし何かあっても、僕は最後まで太賀の味方でありたい。例えば、アイツが事件を起こしたら俺は一緒になって土下座して謝るし、必要なお金も払うし、それでも許してもらえなかったら腹を切る、くらいの覚悟はあります。そこは、やっぱり親子なんでね。でも、太賀に“(炎上や、軽はずみな言動をしないように)いろいろ気をつけろよ”って言うと、“お前もな”って返されます。そりゃそうだ、自分でもそう思う(笑)」
どんな質問を投げかけても「太賀は正直者で親を困らせることがなかった」と、出てくるエピソードは微笑ましいものばかり。
「親だからこう言うわけじゃないんですけど、いい子なんです。本当はここで悪ガキエピソードのひとつやふたつ、披露したいくらいなんだけど……。振り返ってもやっぱり、アイツはいい子なんですよ。ゲームで負けたときだけは、昔から荒れてましたけど(笑)。
でも、この間、餃子はお酢と胡椒で食べるか、醤油とラー油で食べるかで言い合って。ムカついたから、太賀の子どものころの写真をSNSにアップしました。以前、“ホントに勘弁して”って言われてたから、“これはいい方法だぞ、ざまあみろ”と思って(笑)。ですから今後、僕のSNSに太賀の幼少期の写真が上がったときには“あ、こいつらモメたな”って思ってもらえたら間違いないです」
「僕のほうが子どもなのかもね」と笑った中野は、とてもチャーミングな父親の顔をしていた。
(取材・文/高橋もも子)
【PROFILE】
中野英雄(なかの・ひでお) ◎1964年12月生まれ。京都府出身。'85年、哀川翔から『劇男一世風靡』に勧誘されたことをきっかけに芸能活動を開始。'92年、ドラマ『愛という名のもとに』で“チョロ”と呼ばれる真面目な青年を演じて人気を博す。その後も映画『アウトレイジ』シリーズや『首領への道』などのVシネ、各種テレビドラマ、バラエティ番組などに出演し、現在も幅広く活躍中。