――その後、ピクサーの規模はどんどん大きくなっていきます。
社員の中にはエキスパートになる人、ゼネラリストになる人もいました。まったく別の部門に行った人もいる。まだこういう部門がある、こういう仕事があるといった、カチッと固まったものがなかった時期だったので、自分のキャリアは自分で見つける必要があったんです。自分で部署を作っちゃった人もいますよ。
社員の「好き」を大事にする
私もいろいろなことをやらせてもらった。以前からキャラクターが大好きだったので、トイ・ストーリーの次の作品である『バグズ・ライフ』から、キャラクター部門に入りました。ファインディング・ニモの「ニモ」など”かわいい系”のキャラクターを担当し、その流れで『レミーのおいしいレストラン』の「レミー」の仕事をいただいた。
私、ハロウィンのコスチュームを作るのが趣味なんです。そうしたら『メリダとおそろしの森』のときに、キャラクターの服を作らないかと言われた。それをきっかけに、キャラクターの服や髪の毛などを作り、シミュレーションをかけて動かす、シミュレーション部門に移りました。
ピクサーという会社は、社員の興味や好きなことをとても大事にするんです。好きなことって、やっぱり伸びますよね。それにうまく行くと、すごく褒めてくれる。そんな環境の中で、社員は自分たちで自分たちの居場所を作っていくんです。
――規模が大きくなって、使えるおカネが増えたり、仕事の仕方が変わったりしましたか?
使えるお金は、初めの頃とほとんど変わらないですよ(笑)。社員数は1200人近くになりましたが、今では少なくとも3本の映画が同時に動いているので、逆に人が足りなかったりする。
同時進行でも、昔と違ってスケジューリングはしっかりしています。それに社員同士のつながりがとても密で、違う仕事をしていても情報が伝わる。うまくいったことが自然と共有でき、次の作品に反映できるのです。うちのソフトウェアはすべてインハウス(自社開発)なので、ソフトの開発が進むと次の映画ですぐに使える利点もあります。
――技術も随分と進歩したでしょうね。
ピクサーにいると、コンピューターの歴史をみているようです。
トイ・ストーリーのときは、シミュレーション自体がありませんでした。シミュレーションが入ったのは、モンスターズ・インクのときだと思います。サリーの毛とブーのシャツから始まった。シミュレーションが入ってから、表現がより自然になり、強調できるようになりました。