なぜ、彼女たちは成功できたのか

 そして注目すべきは、ハイレベルな演技力を持つ同い年の3人がまったく異なる芸能生活を歩んできたこと。

 山口紗弥加は10代のころにアイドル女優として活躍したあと、バイプレーヤーとして地道に地位を固めていった。

 江口のりこは劇団東京乾電池に入団し、雌伏の時を過ごしながらも、小さな役から出演作を重ねて現在の地位をつかんだ叩き上げ。

 小池栄子はグラビアアイドルとして活躍しつつバラエティーにも出演し、司会業もこなしながら女優業を本格化させていった。

 まさに三者三様の芸能生活であり、それでも40歳になった今、同等レベルの技量と評価を得ているところが興味深い。

 これは「どんな芸能生活を送っても、3人のように役柄、スタッフ、共演者に向き合い続けてキャリアを重ねていけば、40歳になったときに成功できる」という証明のようにも見える。逆に言えば、3人のように向き合い続けなかった女優は、40歳になってもこれほど幅のある演技はできないし、そういうオファーが届かないだろう。

 さらに「さすが」と思わせるのは、これ以降の出演作がこの段階で発表されていること。

 山口紗弥加は来年1月スタートの『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』(カンテレ・フジテレビ系)で妊婦の英語教師・水野楓を演じ、江口のりこも1月スタートの『俺の家の話』(TBS系)で主人公・観山寿一(長瀬智也)の妹で進学塾講師・長田舞を演じる。また、小池栄子は今月25日公開予定の映画『えんとつ町のプペル』、来年にも吉永小百合の主演映画『いのちの停車場』への出演が明らかになっている。

 来年以降も3人の仕事が増えることはあっても、減ることはないはずだ。3人の女優道は、まさに論語の「四十にして惑わず」=不惑。少なくとも女優業においては迷うことなく自分の道を歩み、雌伏の時を過ごす30代女優たちのロールモデルになっていくだろう。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
 雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを提供するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各番組のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、主要番組・新番組、全国放送の連ドラはすべて視聴。著書に「トップ・インタビュアーの「聴き技」84」「話しかけなくていい!会話術」など。