コロナ禍で見た若い女性のリアル

 ネットカフェで寝泊まりしながら働く人たちは、おもに10代~40代の年齢層で、男女に関わらず、もともとギリギリの生活を強いられている人たちだった。就労形態はほとんどが派遣や非正規、そしてアルバイト。一生懸命働いても、月々の平均月収は11万4000円。どんなに頑張っても、アパートの初期費用を貯めることは難しい。もちろん、援助してくれる親などいない。

 コロナ禍の東京で出会った二十歳そこそこの若い女性たちが「もう死ぬしかないと思った」「久しぶりにシャワーを浴びたい。髪を洗いたい」「甘いジュースなんて久し振り」「駅前のベンチで荷物を抱きしめながらふた晩過ごした」などと話す。

 10年以上の歳月をネットカフェや24時間営業のファストフード店で眠るうちに、身分証から所持品のほとんどを盗まれ、自分が自分であることを証明する手段の一切を失くした女性もいる。ネットカフェのパソコンで、腎臓を売るルートを検索していた若い女性もいる。毛羽立ち茶色く汚れたマスクをつけて、「生活保護は受けたくない」と歌舞伎町に消えて行った若い女性もいる。汚れたマスクを外してアイスコーヒーを飲むとき、虫歯で溶けて形を成していない前歯が斜めに並んでいるのが見えた。

 これが、私がコロナ禍の8か月間に見てきた若い女性たちのリアルだ。こんなに若い人たちをそこまで追い詰め、放置している社会や国に怒りを覚えるとともに、頑張ればある程度は報われる時代を生き、現状を作ってきてしまった一人として後ろめたさを感じ続けている。

 女性は男性よりも給与が少ないだけでなく、年金も少ない。単身だったり、夫に先立たれたりしていたら、その後の生活維持は困難になる。だから定年はとうに超えた年齢層の女性たちが働き続けているのをあちこちで目にする。底冷えする真冬の道路工事現場で80過ぎと思しき女性警備員が小さい身体にダブついたユニフォームを着て、白い息を吐きながら交通整理をしているのを見かけたりすると、私は何だか無性に悲しくなってしまい、うつむいて足早に通り過ぎる。働くのが好きなのかもしれない。でも、本当にそうなのだろうか?

 若ければ稼げるかといえば、そうでもない。コロナで失職した女性が生きていく術として風俗を選んだ。その女性がNHKのテレビカメラの前で申告した日給は5,000円。

 私たちは、いつまで、どこまで身を削って自助でやっていかなくてはいけないのだろう。