政府の顔色をうかがうような番組作り

「民法とNHKの政治ニュースを見比べてみたら、その理由が推し量れるかもしれませんよ」(砂川教授、以下同)

「昔は“みなさまのNHK”を掲げ、視聴者に寄り添う姿勢をとっていましたが、現在は違ってきている。どちらかというと、国会だとか役所のほうに顔が向いていますね

 こんなエピソードがあるという。菅総理がNHK『ニュースウオッチ9』に生出演をしたときのこと、終わりぎわにキャスターが、日本学術会議任命問題について菅総理に何度も質問を重ねた。総理はあからさまに不愉快な表情を浮かべた。そして、その後、内閣広報官からNHK報道局にクレームが入った。

圧力ともいえますね安倍前首相時代にも、同じようなことが起きています報道局の上層部は、すっかり政府の顔色をうかがうような番組作りを推し進め、もはや“真実を伝えない公共放送”ともいえる状況NHKの番組は良質なものが多いですが、報道におけるこの姿勢は、いかがなものかと思います」

 ではなぜ、政府がNHKに対して、権力をふりかざすことが可能なのか。その理由は、経営委員長の任命と、予算決めにある。

「まず経営委員会ですが、これはいわばNHKの最高意思決定機関。NHKに大きな影響力がある組織です。その委員の人事は、国会の同意を得て、内閣総理大臣が任命することになっています

 総理大臣の息がかかった人物が選ばれることが多々あるのだ。それゆえ経営委員会は、政府に不利な報道があれば、現場に対して口を挟むこともあるという。さらにNHKの予算は、国会承認を得られないと動かせない。

「総理大臣の機嫌をそこねて、承認されないなんて事態になればNHKとしては一大事です。3月末の新年度予算の決定までは、“政治の季節”であるのに、より報道番組が萎縮する傾向にあります

 このようにNHKと政府は切っても切れない関係。だからこそ、総務省も“割増金”などというNHKよりとも思える方針を打ち出すのだ。

 収益7000億円というのは世界的にみてもかなり大きな金額だ。昨今の状況から広告収入が減少傾向にある民放各局は、経費削減などの経営努力が迫られているが、NHKはどこ吹く風。

「とにかく財源が豊富で、人モノ金のかけ方が違います。報道現場において、民放や新聞社の報道スタッフはコンビニ弁当を食べながら仕事をしているが、NHKのスタッフは、キッチンカーが来て湯気の立った弁当を食べている……なんて揶揄されるぐらいです」