何よりもキツイ、ゴキブリの処理
続いて見せてくれたのは、30代男性の「ゴミ屋敷」をイメージして作られたミニチュア。
「ダンボールが多いのは、外に出ないでネット注文が多いことを表しています。若い人だと、宅配ピザの空箱やファーストフードの袋なんかも多いですね」
部屋にはアマゾンなどの段ボールがあり、ドーナツの食べ残しやコーラの空き缶などが転がっている。だが、食べ残しも片づける側からしたら厄介という。
「空のお弁当は乾燥しているからいいんですが、食べ残しや生ゴミなど乾燥せずにネッチャリとしているものは匂いもすごい。ゴキブリとか虫も湧いていてつらいですね。私、本当に黒ゴキブリがダメなんです。とあるおばあさんの家を片づけたときに、部屋中にうじゃうじゃいたのが、今でもトラウマです。
よく孤独死の現場とかやってて病んだりしないの? なんて質問を受けますが、私は人間が相手ならば“家族”だと思ってるのでまったく嫌な気持ちはないんです。だけど唯一、ゴキブリだけはダメなんですよね」
と本音もポロリ。さらに、
「ゴミがかさばってふんわりしているといいんですが、ギュッと固まってしまうと、何年もかけて溜まったゴミが地層みたいになっていて大変。板みたいになってるから、ゴミ袋にも簡単にいれられなくて」
その場合はクワの手のような専用の道具で掃除をする。だが、権利書や免許証、お金などゴミではないものが混じっていたりもして、一筋縄でもいかないそう。
そしてひとつ、これらゴミ屋敷を見ていて気になることがあった。ゴミ屋敷とはいえ、ちゃんと掃除道具や「ゴキブリホイホイ」などが置いてあるのだ。
「片づけてるとコロコロ(粘着カーペットクリーナー)とか、掃除道具が出てきたりするんですよね。それからわかるように、みんなはじめはキレイにしていたんですよ。
最初にも言いましたが、誰でもゴミ屋敷になる可能性がある。ゴミ屋敷って聞くと、小汚い人が住んでるイメージかもしれませんが、実は全然そんなことない。逆に意外と外ではキレイにしている人が住んでいたりもして。ゴミ屋敷の住人が銀座のママさんだった、なんてこともありました。本当、見た目ではまったくわからないんですよ」
実際、小島さんの元には誰が依頼してくる?
「ご自分で連絡してくる方が多いです。でも自分の部屋だと正直に言わない人もいます。友人が汚くしたとか、ここは兄弟の部屋だとか。どう思われるかとか、恥ずかしいのかもしれません。だから周りにSOSを出せないままゴミ屋敷になってしまう。
本人が亡くなっている場合は、ご家族……と言っても近しい人からではなく、親戚から依頼がくることが多いです。両親から連絡を受けた場合でも、家に行って初めてわが子の家がゴミ屋敷だったと知るケースも少なくなくて。
コミュニケーションの重要性を感じるのは、孤独死と同じですね。“おはよう”“こんにちは”だけでもいい。家族、家族が難しければ近所の方でも、少しでもコミュニケーションがあるだけで、何かプラスの方に変わることができるのかもしれません。
ゴミ屋敷のきっかけは些細なことだったりもする。決して他人ごとじゃない。見てくれた人にもそのようなメッセージを受け取ってもらえたらいいなと思っています」
伝えたいメッセージを込め、作られていく小島さんの作品。遺品整理という本業にの傍ら、彼女は今日も事務所の空きスペースでミニチュア作品の製作に取りかかっている。