2016年に覚せい剤取締法違反で逮捕された杉田あきひろさん(55歳)。子どもたちの『歌のおにいさん』として知られ、歌手として活動していた杉田さんが初めて薬物を経験したのは1993年、二十代後半のミュージカル俳優時代だったという。

「当時は知人の勧めで好奇心から覚醒剤とは知らず1回だけ吸いましたが、常習することもなく、その後『歌のおにいさん』として活動していたときもまったくやっていませんでした。しかし、『おにいさん』を卒業して数年後、バリ島旅行の際に売人に声をかけられたとき、記憶がよみがえり薬物が欲しくなったのです。

 8年間もやめていたのに、そのときは毛穴が開いて、震えがくるほどでした。海外だし1回くらいいいかという気持ちもありましたが、日本に帰国してからも覚醒剤に手を出すようになり、薬物依存症が進んでいったのです」

依存症は人間関係を奪う病気

 逮捕され、懲役1年6か月、執行猶予3年の判決を受け、保釈後は「自分を変えたい」と、回復支援施設『ダルク』の中でも日本一厳しいと言われる施設を選び、そこで3年間を過ごした。

「毎朝5時に起きて、5Kmのランニング、掃除、畑仕事、ミーティングの日々でした。ミーティングでは毎日1時間を2回、自分に正直になって、過去を見つめなおします。厳しい日々ですが、もっともつらかったのは、ダルクに入って4か月後に母が亡くなったことでした。逮捕されて兄に勘当されていたこともあり、母に手を合わすこともできませんでした。依存症は人間関係をすべて奪ってしまう病気なのです」

 現在は、歌手としてのコンサート活動、依存症予防教育アドバイザーとしての講演活動、介護士と3つのわらじをはいている。

ダルクに入って半年後に歌手としてコンサートを開く機会をいただき、周りの方のご協力のおかげで回復していきました。介護の現場では、おじいちゃん、おばあちゃんが僕の歌を聴いて喜んでくれるのもうれしいです。

 好奇心やひとときの快楽から薬に手を出すと、薬物依存症になって、仕事も家族も友人も失ってしまいます。僕のようなしんどい思いをしないためにも、依存症について正しい知識を持っていただきたいと思っています」

「AKIHIRO SUGITA 'Chante le Monde' Concert 2021
〜杉田あきひろ信州新春シャンソンショー〜」
春ごろ開催(1月24日から延期に)
場所:松川村 すずの音ホール
チケット:1,500円
予約窓口:電話0261-62-2461