【老後資金編】年金をできるだけ多くもらうには
年金は受給のタイミングで額が変わると知っていても、仕組みが複雑すぎて理解しがたい?
「手元に資産や現金があってすぐ年金をもらわなくてもいい状況なら、受給は1年ずつでも繰り下げたほうが長期的には得です」
逆に目先のお金にとらわれて、60歳に前倒しして繰り上げ受給してしまうと、かなり損。また、会社員など厚生年金保険に加入しながら年金を受け取った場合、年金額や給与・賞与の額に応じて、年金の一部または全額が停止されることも。
「残念ながら停止になった年金は繰り下げ受給ができず、その分は消えてしまいます。では、働くと年金が停止するなら、働かないほうが得なのかというとそうではありません。厚生年金に加入しているため、その後に受け取る老齢厚生年金が増額されます」
年金の停止にかかわらず、元気な限り長く働くのが結局は得。
●第12問
親が亡くなったあと、地方にある実家は空き家になっています。このまま放置しておくと10年間でいくら損する?
(1)50万円以下 (2)100万円程度 (3)200万円以上
【正解】(3)……住まない実家があるだけで損をする
空き家となった実家には固定資産税や都市計画税がかかる。仮に固定資産税の評価額が宅地(150平方メートル)1800万円、家屋500万円だと、税額は年に約14万円(※22)に。家にかかる光熱費が年3万6000円(※23)かかり実家の維持費は年17万6000円。10年間では、176万円にも。庭の手入れや実家までの交通費を加えると200万円を超える。
※22 固定資産税・都市計画税は、「小規模宅地の特例」を加味して算出
※23 電気代は月1000円、水道代は月2000円で算出
●第13問
妻が専業主婦、夫は年収700万円。平成22年に結婚したこの夫婦が10年後に離婚した場合、年金分割を申請するのとしないのとでは、受け取る年金(年額)はいくら変わる?
(1)10万円くらい (2)20万円くらい (3)30万円くらい (4)40万円くらい
【正解】(2)……離婚しても年金で不利益にならない
年金分割は、年金保険料の記録を夫婦で分け、給与の低いほうが将来の年金額を増やすことができる制度。婚姻関係中の夫の年収がずっと700万円だった場合、年額で19万4027円も増えるのです。平成20年4月以降の年金を分割する「3号分割」は夫婦の合意の必要はなく、対象は婚姻関係中に国民年金第3号被保険者だった人に限られます(※24)。
※24 平成19年3月以前の婚姻期間の年金を分割する「合意分割」では、夫婦お互いの合意が必要
●第14問
65歳の年金額は180万円です。100歳まで生きたとすると、65歳で受け取る場合と、70歳まで繰り下げ受給する場合の、受給額の差は?
(1)ほとんど差はない
(2)繰り下げたほうが100万円の得
(3)繰り下げたほうが500万円の得
(4)繰り下げたほうが1000万円以上の得
【正解】(4)……繰り下げ受給で年金が大幅アップ
年金受給を65歳より後に開始する繰り下げ受給。65歳時点で180万円だった年金は、70歳までの繰り下げ受給で255万6000円に、100歳まで生きたら30年で7668万円(※25)。繰り下げ受給をしなければ、35年間の受け取りは6300万円(※26)で差額は1368万円となり正解は(4)。
※25 255.6万円×30年=7668万円
※26 180万円×35年=6300万円
●第15問
国民年金の保険料は1か月1万6540円(2020年)です。20年間の保険料は、総額で396万9600円になります。では、口座払いで2年前納すると、20年でいくら得する?
(1)10万5200円 (2)15万8400円 (3)56万8700円 (4)79万8500円
【正解】(2)……前払いするだけで安くなる
国民年金保険料の支払いは国民の義務。会社員は厚生年金に組み込まれているため、給与から天引きされる。自営業者などの第1号被保険者は自分で支払うが、その支払い方法によって、割引に。2年前納すると2年間で1万5840円割り引かれ20年では15万8400円にもなり、約10か月分の保険料が安くなることに!
(取材・文/樋口由夏)
《PROFILE》
前田晃介 ◎1988年生まれ。高知県出身。大手不動産管理会社、ファイナンシャルプランナー会社を経て起業。著書に『読むだけで1億円以上得する! お金ドリル88』(徳間書店)がある。