恋愛偏差値40以下の久利生、その鬼の所業とは?

 率直に言って、こんなにダラダラした恋愛は現実でもドラマでも、なかなかお目にかかれません。

 この久利生公平という男、検事としてさまざまな難事件の真相を究明してきた、きれ者。ですが、あえて言葉を選ばずに言わせていただくと、恋愛に関しては恋愛偏差値40にも満たないダメンズですよね。

 自分も雨宮のことが好きなくせに、積極性を見せることはごくごく稀で、恋の進展はたいてい雨宮任せ。恋愛に不慣れな雨宮がせっかく勇気を振り絞って一歩踏み出して、石垣島まで会いに行ったのに、ちゃんと恋人らしいことはしてあげないわけです。

 検事の仕事に人生を賭けていて、捜査活動でいつもご多忙なのはわかります。それでも雨宮が好きなのもわかります。

 ですから百万歩譲って、ドラマ・第1期から、劇場版・第1弾の6年間放置したのは許しましょう。忙しくて付き合えないなら、きちんとケジメを付けて、突き放してあげるという優しさもあったはず……とは思いますが、まぁ許しましょう。

 けど「離しません」宣言してキスしていたのはいったい。

 6年放置という過程を経て、とうとう結ばれた相手とまたすぐに会わなくなって、次の再会が8年後。鬼の所業にもほどがある。

 そう、2001年に始まった久利生と雨宮の恋愛ドラマは、微妙な関係ながらちょっと進展し、2007年にようやくキスまでいき、しかしすぐに疎遠になり、2015年にまた微妙な関係に戻るという、……足掛け15年も『HERO』ファンをヤキモキさせているのです。​

 さらに言うなら、今後また『HERO』の続編が作られる可能性も少なからずあるでしょう。ですから、直近の劇場版・第2弾で結ばれたわけではないものの、気持ちを通じ合わせたふたりの恋愛模様は、20年経った2021年現在も“終わっていない”とも言えるのです。

 こんなにも長く結論が出ない恋愛は、木村拓哉史上どころか日本のドラマ史上でも類を見ないのではないでしょうか。もし『HERO』続編があるなら、今度こそ久利生と雨宮の恋愛に決着がつくのか……。そんな2人の付かず離れずの関係がいつまでも気になってしまうのが俳優・木村拓哉史上、“最大の恋愛ドラマ”たる所以なのです。

PROFILE●堺屋 大地(さかいや だいち)●恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー、恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』(文藝春秋)、『日刊SPA!』(扶桑社)、『Business Journal』(サイゾー)などに寄稿している。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。