切らずに治す放射線療法

 がんの治療は、手術療法、放射線療法、化学療法の3本柱で行われている。近年は免疫療法もがん治療の主な選択肢となり、昨年9月に楽天の三木谷浩史会長兼社長が光免疫療法の新薬の承認を取得したことで話題となった。

 今回紹介したBNCTは、放射線療法に分類される。

「放射線療法は、外科手術と異なり、切らずに治す身体に負担の少ない治療法です。がん細胞を取りきるという意味では、外科手術に劣るところもありますが、部位や大きさによっては同等の治療効果を示すこともあります。また、手術では取れない場所にあるがんにも放射線は有効です」(高井先生、以下同)

 体力的に手術が難しい高齢者、まだ人生に先があり生活の質を下げたくない退職世代などは選択肢に入れたい治療法だ。

 ただし、放射線に弱い胃腸と大腸のがんには適応外だ。放射線の種類によっても、適応のがんが異なる。

「エックス線、ガンマ線は従来から行われている放射線治療で、陽子線、重粒子線は比較的新しく、BNCTは昨年から始まった治療法です」

 エックス線、ガンマ線にも多方面から集中照射をするサイバーナイフ、ガンマナイフなど新しい治療法が続々と登場している。

がん治療の3本柱】
・外科手術……がんを直接取り除くため治癒率は高いが、身体の機能や形を損なう可能性がある。部位や年齢などで外科手術ができない場合もある。

・放射線療法……身体を傷つけず、負担が少ない。身体機能や形を温存できる。がんの種類によっては、外科手術と同じ治癒率をあげることもある。

・化学療法……手術や放射線治療と併用、または、白血病など手術や放射線治療ができないがんに適用。化学療法だけでは治りにくく、全身的な副作用が起きやすい。

 俳優の村野武範さんは、南東北BNCT研究センターの関連病院である、南東北がん陽子線治療センターで中咽頭がんの治療を受けた。最初の病院で「余命は聞かないでください」と死の宣告を受けたが、妻が探した当センターで陽子線治療を受け、現在も元気に過ごしている。

 多くは医師に治療法を提示されると、身体の機能を失っても、つらい副作用で苦しむとしても受け入れるしかないと考えてしまいがち。しかし、40代女性は、

「昨年、父親が前立腺がんでロボット手術を受けたのですが、排尿機能を失い、家に閉じこもりきりになりました。まだ70代前半なので、陽子線治療を受けていれば……と後悔しています」

 また兄を肺がんで亡くしたという50代の女性は「たとえ希望の治療ができなくても、セカンドオピニオンを受けて納得して治療に向かえば、それ以降の心の持ち方が変わります」と話す。

 人生100時代といわれる今、身体に負担が少なく、治療成績が高い最先端の放射線治療施設がある病院で、セカンドオピニオンを受けることに迷いは必要ない。あきらめないことが何よりも大切だ。

放射線治療の種類
放射線治療の種類

(取材・文/山崎ますみ)

《DATA》
一般財団法人 脳神経疾患研究所附属 南東北BNCT研究センター
住所:〒963-8052 福島県郡山市八山田七丁目10番地
TEL:024-934-5330(代)(8時30分~17時 月曜~土曜/祝祭日休)
URL:http://southerntohoku-bnct.com/