結果として、「直木賞」に輝いたのは西條奈加の『心淋し川(うらさびしがわ)』で、惜しくも受賞を逃した加藤。それでも1月20日の選考会で、選考委員を務めた小説家の北方謙三氏は加藤の作品に対して《よく書けていた》《強く推す委員もいた》と評し、さらにこんな裏側をぶっちゃけていた。
《決選投票の前に加藤シゲアキに直木賞を受賞させようという機運が選考委員の中にあって、私もその1人でしたが、やはり“もう1作ぐらい待ってみよう”と。とても惜しかった》
なんと、投票を待たずして「加藤を受賞させる」ような空気もあったというのだ。「“彼ら”はしばしば出版業界の救世主になる」とは文芸ジャーナリスト。
「最近では『芥川賞』の又吉直樹さんを代表するように、時に文学賞とは“畑違い”とも思える作家さんがノミネートされることもあります。他にも、例えば若い女性作家さんが賞をとればメディア露出がグッと上がり、それをきっかけに候補になった他の作品にも興味を示してもらえるようになるんです。
もちろん、作品自体がおもしろいことが大前提ですが、仮に同等の評価ならばより著名な、話題になりそうな作家を推したいのが業界の本音なのかもしれません」
受賞に向けられる「忖度」の声
確かに又吉の『火花』が書籍だけにとどまらず、ドラマや映画、舞台や漫画にまでメディアミックスされたように、話題になるほど多方面にわたってビジネスが広がる。一方で、有名人の受賞は“諸刃の剣”になりえるとも。
「内容が伴わなければ当然、“これで受賞?”“忖度では?”と懐疑的な声も出てくるでしょう。芸能人であれば、特にアイドルであればなおさらのことで、文学賞の権威をも損なうリスクも含んでいます。
北方先生をはじめとした選考委員が、加藤さんの作品が受賞に値すると評しながらも“もう1作待ってみよう”とストップをかけたのは、邪推されることで彼の才能がここで潰されないように気遣ったのかもしれませんね」(前出・文芸ジャーナリスト)
「吉川英治文学新人賞」は3月2日に、「本屋大賞」は4月14日にそれぞれ受賞作が発表される。加藤は晴れて、ジャニーズ初の“作家先生”になれるのか。