実力派俳優でも難しいのはなぜ?

『ワースト大河』の第2位にランクインしたのは2015年に放送された井上真央主演の『花燃ゆ』(平均視聴率12.0%)。

 江戸末期の長州藩を舞台に吉田松陰の末妹・文役を井上が好演。当時旬の東出昌大、高良健吾、賀来賢人たちイケメン俳優がそろい踏みしたことから当初“イケメン大河”と呼ばれた。

ほかにも“セクシー大河”“幕末男子の育て方”などのキャッチコピーが躍り、始まる前から拒絶反応を起こしてしまった大河ファンが続出。ファンの多くが見たいのはそんなことじゃないんですよ。完全に作り手サイドの戦略ミス。イケメンや胸キュンのポイントは視聴者が勝手に見つけて、SNSで盛り上がるもの。制作サイドが仕掛けるものではありません」

 しかも主人公である文の知名度が低く、視聴者の興味を引くポイントが少なかった。そういった題材選びにも問題があったと田幸さんは、低視聴率の原因を分析する。

 さらに主演する井上真央が「主人公である私の力不足」と放送中にもかかわらず謝罪するという前代未聞のオマケつき。

「真央さんは2011年、朝ドラ『おひさま』でもヒロインを務めるなど誰もが認める女優。『花燃ゆ』での演技も魅力的でよかった。

 朝ドラや大河は視聴率がとれないとその後、民放の連ドラに呼ばれなくなるなど前途ある俳優の将来をつぶしかねない諸刃の剣でもあります

 実はワースト大河第2位で同率、2012年に放送された大河ドラマ『平清盛』でも、主演する松山ケンイチがそのような憂き目にあっている。大河放送終了後、約1年間テレビドラマに出演していないのだ。

最低視聴率7.5%を記録して「最低記録を更新できたことは光栄」とコメント
最低視聴率7.5%を記録して「最低記録を更新できたことは光栄」とコメント

ロンドンオリンピックなどもあり、最低視聴率を更新するなど苦杯をなめ、その後の松山の俳優人生にも影を落としてしまいました

 だがその一方で、いまだに“清盛最強説”を唱える熱心なファンもいる。

画作りもリアリティーを追求したため、当時の兵庫県知事が“画面が汚い”など発言。“受けつけない”と離脱した視聴者もいました。ですが悪役と捉えられがちな清盛を主人公にとらえ、その光と影を描く藤本有紀さんの脚本が本当に素晴らしかった

 ちなみに藤本氏が脚本を手がけた2007年の朝ドラ『ちりとてちん』も視聴率にこそ恵まれなかったものの熱狂的なファンに支えられDVDの売り上げは上々。「日が当たらない人に日を当てる」藤本脚本ならではの持ち味が出ていると田幸さんは解説する。

『ワースト大河4位』にランクインしたのは2018年の大河ドラマ西郷どん』(平均視聴率12.7%)。主演する鈴木亮平が役作りのために体重を25キロ増やすなど徹底し、明治維新の英雄・西郷隆盛を熱演。

 だが、メジャーな主人公なのに、視聴率は伸びず──。