一周回るどころか、すでに芸能界を二、三周した感のある声のSNS『Clubhouse』(クラブハウス)。

 タレントの藤田ニコル(22)は、真っ先に沼にはまって、そのトーク内容を写真週刊誌に書かれたことでプンプンし、さらにTBS系『サンデー・ジャポン』で「もう飽きたよね」と“一抜けた!”を宣言する素早さ。いやいや、飽きたとか飽きないじゃなくて、『Clubhouse』って、ツールとしてどう使いこなすかどうかだからと、少し突っ込んでみたくなる。

Clubhouseはネタの宝庫だが……

 誰でもが集える部屋『ルーム』には、誰がいるのか名前が表示されてしまうため、ここには市川海老蔵(43)、あちらには安田大サーカスのクロちゃん(44)と、居どころ丸見え。タレントの千秋(49)、雛形あきこ(43)は常連さんと認定できる頻度で出没し、一体いつ仕事してるの? と首をひねりたくなる。ミュージシャンの米津玄師(29)や女優の橋本環奈(22)もサインインしている。

 一応、トーク内容は録音してはいけない、他言してはいけない、などの内規はあるようだが、すでに録音されたものがツイキャスに丸ごとアップされていたりする。言っちゃダメと言われても、人の口に戸は立てられない。

 芸能人がおしゃべりしているルームに、芸能リポーターの井上公造氏がいたり、週刊誌のトップ記者がこっそり聞き耳立てていたりする。小さな情報を仕入れて、点として保存しておくと、どこかで線につながったり、それが面に広がったりするのが情報。

「Clubhouseでこんなことを聞いた」と書かない限り、情報の出どころなどわからない。

 とはいえ、テレビの情報番組などでタレントやコメンテーターの発言を聞いて、速攻でウェブニュースの記事にする“コタツ記者軍団”の出足は鈍い。

「ネタはいくらでも転がっていますよ。つい先日は、よしもとのOBが、M-1の創世記についてしゃべっていましたけど、裏話だらけでいくらでもネット記事になりそうでした。でも、安易に記事にしてしまうと、訴訟になる可能性も無きにしも非ずですから、コタツ記者のみなさんは様子見のようですよ」

 とスポーツ紙記者は読み解く。要するにビビっている。

「うちの事務所は、Clubhouse禁止令が出ています」

 と明かす芸能マネージャーは、危険性を明かす。

「編集ができない。それでもしゃべるのは危険です。外に情報は洩れます。決定的な差別発言やインサイダーにつながるようなこと、例えば画期的な新商品のCMに出ると言ったことを漏らしたら、それこそアウトですからね」

 ダウンタウンの松本人志(57)は、やっていないと明かした。ハマっていた千秋も飽きを匂わすなど、人それぞれによって距離感が違う。SNSを勝手にできないジャニーズアイドルは、足を踏み込むことができない。

 あちこちのルームに行くことを、「はしごする」という。

 試しにはしごをしてみると、流行りの話題の中心は どうやってClubhouseをビジネスに生かすか、どう金を儲けるかというセミナー系、コーチ系、美容・コスメ系のルーム、運気やパワースポット系、海外移住をアテンドするビジネス系、企業や商品のPR系などなど。損得を抜きにゆるく話せるなら面白いSNSと思えるが、みんなカネの匂いをプンプンさせて、必死過ぎる。

 なかには茶道の稽古、講談の稽古、落語の稽古、仏像を掘る音を流すだけ、小室哲哉がピアノを弾く、農家のトークなど、普段聞けない話が聞けたり、音の魅力を伝えるルームもある。金もうけからほど遠い世界で、いい。

 誰に聞かれてもいい、たいしたことのない話をする場所に、群がるように一部芸能人も一部一般人も聞き耳を立てて、ひと月が経とうとしている。根付くのか、飽きられるのか。声のやり取りができるSNSがなかっただけに、その新鮮味だけで拡散したが、今後どう展開していくのか。将来的にマネタイズ(収益化)ができれば、芸能人の食いつき方も変わる。未知な展開が隠されているだけに、手放すにはまだ惜しいSNSだ。

〈取材・文/薮入うらら〉