若手女優の登竜門“リハウスガール”としてデビューしたこともあり、瞬く間にアイドル的な存在に。そのため、彼女をひと目見ようとファンが実家に訪れることも珍しくなかったという。
アイドルばり人気だった池脇の幼少期
「地元の高校に通っていたこともあり、すぐにウチの住所もバレてしまって。ある日、男子高校生4人組が家の前にいて、ちぃちゃんは仕事で東京に行っていたから“どれだけ待っても、帰ってこないよ”って伝えているのに、翌日も来たんです。話を聞いたら、神戸からわざわざ来ていたみたいで。お小遣いを渡して帰そうとしても、“会えなくても、来るだけでいいんです”と言って結局、2日間家の前に座り込んでいましたね」
しかし、いちばんのファンは母親自身だったようだ。
「映画デビューとなった『大阪物語』は大阪でロケをしていたので“娘の撮影現場が見られるのも最初で最後だな”と思い、毎日野次馬として見に行っていました(笑)。スタッフの方に“どいてください!”と何度も怒られたけど、あれは幸せだったわね」
『その女、ジルバ』のさえない40歳女性役など、完璧な役づくりで知られているが、母親はその点を少し心配する。
「完璧すぎてもよくないと私は思っているの。人間、どこか抜かないとしんどいやん。幼いころからしっかり者だったから、“もっとちゃらんぽらんでもええ”って思っているんです。だから“頑張れ”というよりは“頑張っていたね”っていう気持ちです」
とは言うものの、娘がやりたいことを応援するスタイルは昔から変わらないようだ。
「“したい!”っていうことは、放し飼いのように好きにやらせてきました。小さいとき、“ピアノをやりたい”って言って習い始めたので、お父さんの退職金で家にグランドピアノを買ってあげたら、ずっと練習していましたね。
“この子にはこの子の人生がある。私とは違う人生がある”って思いながら育ててきたんです。本人は人と関わることが好きな一方、ひとりでいることも好きな子でした。完璧に役づくりをするのも、小さなころからいろいろなことに没頭していたからなのかもしれませんね」
そう語った後、母親は「ありがとうね」と独り言のようにつぶやいた。それはまるで、東京にいる“ちぃちゃん”へのメッセージのようにも聞こえた――。