とにかく周りの大人にSOSを

 では、親権についてはどうでしょうか。本人が未成年の場合、親権をもつ親は養育や監護の義務を負います。もし子どもが親から虐待やネグレクトを受け、親から親権を奪ってほしいというときは、何か打つ手はあるのでしょうか。

親権停止の審判を経て、親権を停止させる方法があります。親権停止とは、親による親権の行使が困難または不適当で、子どもの利益を害するという場合に、子ども本人やその親族等の請求により、家庭裁判所が2年を超えない範囲で親の親権を停止させる手続きです。

 従来は親権『喪失』の審判しかなく、親権『停止』の手続きはなかったのですが、親権を完全に奪うとなると過度な介入になってしまうことなどから、停止の手続きが新設されました」(宮本弁護士)

 子ども本人が親権停止の請求するためには、まず味方になってくれる大人とつながる必要があります。親などから虐待やネグレクトを受けているなら、警察、児童相談所に通報することは可能です。学校のスクールカウンセラーさんや養護の先生、担任の先生などに相談するのもいいでしょう。話が通じない大人もいるでしょうが、助けてくれる大人に出会えるまで、どうか粘ってほしいものです。

 どれほど酷い親でも、一緒に住んでいない人にはわからないことが多いですし、また子ども自身も、その親しか知らないため自分が虐待を受けていると気付きづらいものです。あるいはもし気付いても、親を悪く言ったり、通報したりするのは気が咎める、と感じる人も多いでしょう。

 でももし親のせいで生きるのが辛いと感じているなら、どうか自分の心や身体を守ることを、最優先してもらいたいものです。その際、この記事にあるような方法で、親との縁切りを試みることも一案と思います。

大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。出版社、編集プロダクションを経て、現在はノンフィクションライターとして活動。そのほか、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。多様な家族の形を見つめる著書『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(ともに太郎次郎社エディタス)など多数出版。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。