世界が終わる気がまったくしない
冬ドラマ、がっかりナンバーワン! その不名誉に輝いたのは、竹内涼真主演の『君と世界が終わる日に』(日曜夜10時30分~日本テレビ系)。通勤中にトンネル滑落事故にあい、閉じ込められてしまった響(竹内涼真)。数日後に脱出すると、街は生き血を求めて人間を食らう“生ける屍”に占拠されていた……! 初回視聴率は8.4%だったが、第6話(2/21放送)では7.1%。
昨年は自粛期間中などに、多くのゾンビ作品を見たという吉田さん。
「映画も見ましたが、Netflixでいったら『キングダム』っていう韓国ドラマ。吉沢亮のほうじゃないですよ。チュ・ジフンが主演で、すごくクオリティが高い。ゾンビの造形がすごくて、動きもめちゃ速い。舞台の作り方もお金があるからか素晴らしい。“今時のゾンビはこんなにハイレベルなのか!”と思い知り、アメリカの『ウォーキングデッド』もシーズン10まで一気見しました。やっぱり面白くて、世界が熱狂する理由がよくわかりました」
『キミセカ』は日テレとHuluの共同製作。製作費もある程度あり、“日本だってこんなゾンビドラマが作れる!”という気骨を見せてくれるのかと思いきや、
「もう超しょぼいわけですよ。まずゾンビが少ない。『ウォーキングデッド』は何万ものゾンビに囲まれ、映像の迫力がすごいんですよ。でも、『キミセカ』だとゾンビが50人……最大でも100人くらい。だから、全然世界が終わる気がしないんですよね。これくらいだったら、自衛隊が制圧するでしょって感じ。タイトルが大げさです。
もちろんコロナ禍ですから、ゾンビ役のエキストラを集めるのも大変だろうと慮(おもんぱか)る部分はあるにしても、アメリカ産や韓国産のゾンビドラマがウケてる中で、日本産がこれかよっていう……ね。なまじ期待してしまったばかりに、あごが外れそう。もう、そのあごが地面につくくらいがっかりです」
さらには『ウォーキングデッド』からパクったようなキャラクターも散見されるという。
「例えば、竹内涼真が演じる響は弓道の名手なんですが、弓矢でゾンビをバシバシ倒していくのは『ウォーキングデッド』のダリル。もう、弓矢ってだけでダリルを想像してしまうわけです。ミショーンっていう女性キャラは日本刀でゾンビをバッサバッサ倒していくんですが、『キミセカ』ではハル(田中道子)が刀を振り回していて」
さらに本家『ウォーキングデッド』は、女性キャラクターがとても生き生きと描かれている点も魅力的だという。
「キャロルっていう女性は夫のDVに悩まされていたけど、でも娘を守るためにゾンビと戦うスキルを身に着ける。女性の自立みたいな部分も描いてるんですよね。そして、世界の終わりみたいな状況でも、子どもを産む女性もいる。それぞれのキャラクターの成長や自立、負けない強い心みたいな部分も描いているんです。
『キミセカ』にもDVを受ける女性(安藤玉恵)は出てくるんですが、その夫は響(竹内涼真)によって成敗されて。なんというか……ちゃちい。女性キャラクターたちは響に従うばかり。従順で受動的。もうちょっと能動的に描いてほしかったですね。本家との格差しか感じません」
吉田さんのダメ出しは止まらない。キャラクターはパクっても、スケールや深みまではパクれなかった『キミセカ』だが、シーズン2はHuluで配信される。
「厳しいですよね。“また続きはHuluでかよ”っていうね。これがもう最近の日テレのやり口なんですけど、それに“ケッ”と思っている視聴者はけっこう多い。『キミセカ』は『ウォーキングデッド』を見ていない人であれば楽しめるのかもしれないけど、いかんせん、見ちゃった人間からすれば、わざわざHuluに入って劣化版を見るなんて意味ないですし(笑)。せめて“Hulu入ろうかな?”と軽く悩むくらいには、地上波でやってる段階で、ちゃんとオリジナルの面白さを見せてほしかったと思いますね」
春から始まるドラマには、がっかりさせられませんように。