「『東京ラブストーリー』(1991年、フジ系)の登場で、憧れから等身大の恋が描かれるようになっていったのが1990年代。東ラブのリカ(鈴木保奈美)の“カンチ(織田裕二)、セックスしよ”というセリフにも現れているように、ヒロインに肉食系女子も登場。男性が振り回される恋愛ものが多かったように感じます。
恋愛ドラマの神様と呼ばれる北川悦吏子さんや、1991年の『101回目のプロポーズ』(フジ系)などで知られる野島伸司さんなど、作家性の溢れる脚本家が出てきて、“僕は死にましぇん!”などのインパクトのあるセリフも多数誕生。
男女が道路や駅のホーム越しに思いを叫びあったり、後ろから抱きしめたり、好きな人を見つけたけど踏切が下りて会えなかったりと、携帯もあまり普及していなかったので歯がゆいすれ違いシーンもやり放題(笑)。恋愛ドラマのセオリーがたくさん作られたのもこの時代でした」
豊川悦司や反町隆史、竹野内豊など個性豊かな俳優たちが登場。そして、出演すれば高視聴率間違いなし。この時代を語る上で欠かせないのがこの人。
キムタク無くして恋ドラは語れない
「1993年『あすなろ白書』、1996年『ロングバケーション』、1997年『ラブジェネレーション』(ともにフジ系)、2000年『ビューティフルライフ』(TBS系)と、まさに1990年代は木村拓哉さんに始まって終わると言えるくらい欠かせない存在。
1994年に『anan』の抱かれたい男ランキングで1位になって15年連続トップ。そのままランキングが終了するほど圧倒的でした(笑)。『ビューティフルライフ』の最終回の視聴率なんて41・3%! テレビがみんなのいちばんの娯楽だった時代でもあるんだなって思いますね」
『ビューティフルライフ』である意味恋愛ドラマを極めた木村は、それ以降、『HERO』(2001年、フジ系)では弁護士、『GOOD LUCK!!』(2003年、TBS系)ではパイロットいわゆる“職業もの”ドラマが主戦場となっていく。そんな中、2000年代では恋愛の形も次第に様変わり。
「2000年代に入ると、まさにイケメン団体戦の幕開け。その口火を切ったのは、恋愛ものとは違うんですが2002年の『ごくせん』(日テレ系)。松本潤さん、小栗旬さん、亀梨和也さん、赤西仁さん、三浦春馬さんなど、あまたのイケメンたちがこぞって出演しヒットしたため、恋愛ドラマ界もその手でいこうと。
その筆頭が2005年の『花より男子』(TBS系)。それまでは、例えばロンバケの木村拓哉さんと山口智子さんみたいに1対1の恋愛が主流でしたが、『花男』では松本潤さん、小栗旬さん、松田翔平さん、阿部力さんという4人のイケメンが1人のヒロインをちやほやするという、女性には夢のような図式に。
さらに2007年の『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジ系)では、小栗旬さんに生田斗真さん、水嶋ヒロさんなどいろんなタイプのイケメン選び放題(笑)。若手のいい俳優さんがたくさん登場した時期でしたね」
それまでハンサムやトレンディ俳優などと言っていたのが、イケメンという言葉に変わり定着したのもこのころ。しかし、ここまで支持を得てきた恋愛ドラマだが、2010年代に入ると急に陰りをみせ始める。