テレビ局のプロデューサーは、どうしてこうも劣化してしまっているのか。
日本テレビ系情報番組『スッキリ!』のアイヌ民族侮辱のケース、テレビ朝日系『報道ステーション』ウェブCMの女性蔑視ケースが相次いだ。
両方とも防げる案件だった。そう指摘するのは、スポーツ紙放送担当記者だ。
「日テレは、プロデューサーがネタを見て、これは考査に確認しようと周囲に漏らしていたそうです。考査というのは、放送に適しているかどうか、放送前・放送後に判断する部署です。確認の必要性を感じていながら、それをしなかった。プロデューサーの失態は大きいですよ。すでにもう、番組から外されていますけどね」
あまりにもお粗末なプロデューサー……。一方、テレビ朝日ケースについても、こう伝える。
「CMですから、絵コンテのコピーチェックは、幾重にも確認できる機会はあり、それらをすべてプロデューサーは目を通していたそうです。もちろん完成品も。にもかかわらず流れたということは、表現の中に潜んでいた女性蔑視の視点、ジェンダー問題への観点がまったくなかったということです」
局員>系列制作会社>非系列制作会社
テレビ番組のプロデューサーという存在について、
「番組によっては100人単位のスタッフを動かし、1日に数千万円単位の予算を使う権限があるため、中小企業の社長ぐらいえらいと思い込んでいる人が大勢いますよ」
そう指摘するのは民放報道局の常駐スタッフだ。
「番組の全体反省会には局員も制作会社の派遣スタッフもみんな出ているのに、平気で『幹部のみなさんはよろしくお願いします』と言って、局員を幹部扱いします。制作会社の人間はみんな嫌そうな顔をしていますけどね。
世間ではコロナ禍の失業者問題が騒がれていますが、テレビ局内では、改変期になると多くのスタッフがクビになっているんです。いわゆる“解雇”ですよ。人の生活を簡単に奪うことも、プロデューサーは平気でする。自分には権限があると思い込んでいる。現場スタッフがいないと成り立たない、と口では言っていながら、現場スタッフに対するリスペクトを感じたことはありませんね。
そんな感覚のプロデューサーが、世間の空気を理解したり寄り添うことができると思いますか?」
もちろん優秀なプロデューサーもいて、スタッフや番組のことを第一に考え仕事に励んでいる人もいる。しかし、今回の問題に関しては「日テレに関してもテレビ朝日に関しても起こるべくして起きたことだと思いますよ」と、前出の民放報道局の常駐スタッフは鼻息を荒げる。
テレビ番組の制作には、局員、系列制作会社、非系列制作会社のスタッフなどが複雑に関わり、同一労働でありながらギャラはまるで違うという大きな格差を作り出している。
「えらそうなことを報道しているテレビ局が内部に作り出しているのが、格差構造なのです。そのことに疑問を持つことがない局員プロデューサーはますます図に乗り、立場の弱いスタッフたちが取り囲む。物申してクビになるかもしれないと考えれば、意見するより沈黙を選びますよ」(前出・民放報道局常駐スタッフ)
高学歴で高年収で社会的地位も高いという高スペックの局員プロデューサーは、自分はできる、自分はエリートだと考える。自分の能力を疑わず、ほかの人の視点を持たない番組幹部が作るテレビ番組や自社CMは、社会通念とズレたテレビ局の体質を映し続ける。
〈取材・文/薮入うらら〉