俳優さんには、よく「当たり役」と呼ばれる役が存在します。が、その「当たり役」のスタッフ陣を見ると、実は、同じスタッフ陣であることも多いものです。
たとえば、以前このコラムでも紹介した星野源さんの当たり役を作ってきたのは、脚本家の野木亜紀子さん(「逃げ恥」「MIU404」「罪の声」)。
今季のドラマの中では最高視聴率を記録した「天国と地獄」の主演、綾瀬はるかさんは、この「天国と地獄」をはじめ、森下佳子さんの脚本にヒット作が多く見られます(ドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」「JIN(仁)」「おんな城主 直虎」)。
長瀬さんも、同様です。これまでさまざまな主演作を演じてきましたが、大きな話題になったのは「池袋ウエストゲートパーク」(2000年)や「タイガー&ドラゴン」(2005年)。この2作品によって、俳優・長瀬智也の存在は大きく評価されました。これに「うぬぼれ刑事」(2010年)を合わせた3作が、クドカン×磯山さんチームでの作品です。
長瀬さんを20代のときにクドカンに引き合わせたプロデューサーの磯山さんは、今回のドラマについてたずねられたとき、「長瀬さんの最高傑作にする」という意気込みで作ったと答えています。
そしてその意気込みは、スタッフの布陣だけはなく、キャストの配役にもあらわれていました。
長瀬さんにゆかりの深い役者陣が支える
「俺の家の話」で、長瀬さん演じる観山寿一は、人間国宝である能楽師の父の後継となることを拒否し、17歳で家出してプロレスラーとして活躍した長男の役回り。
レスラーとしてはピークを過ぎた寿一が再び家に戻ってきたのは、父危篤の知らせを受けたから。寿一は奇跡的な回復をした父の介護をしながら、プロレスと能の二足のわらじを履くことになります。
この、長瀬さんの父親を演じるのが西田敏行さん。
西田さんと長瀬さんは、「タイガー&ドラゴン」では落語の師と弟子、「うぬぼれ刑事」では親子を演じています。磯山さんいわく「本物の親子のよう」という2人の息はぴったり。
とくに、6話の25年ぶりの家族旅行で、わがままな父と大喧嘩してしまうシーン。そして、8話で要介護認定2となった父を、グループホームに入所させるシーン。
愛憎相まみえる家族の介護を壮絶なリアリティーで演じられ、涙なくして見られない名場面でした。