「90年代にプレイステーションのソフトとして発売されたガンダムのゲームが、伝説になっているんです。ガンダムなどはCGで再現、そこに実写を組み合わせた、まさに今回の映画のご先祖さまのような存在でもありますが、実写パートを演じた無名の外国人俳優たちが今なお語り草になっています」(同関係者)
原作アニメをなぞった実写化なだけに、そのイメージから大きくかけ離れたキャスト陣は、違和感でしかなかった。中でもファンに衝撃を与えたのは、歴代アニメキャラの中でも屈指の魅力を持つ、シャア・アズナブル役の俳優の出で立ちだという。
ほかにも実写版ドラマもあった
「シャアの精悍なイメージとは大きくかけ離れ、アゴがパックリ割れたガッチリした男性が演じていて、ヘルメットとマスクをしているものの、どうしてもアゴに目がいってしまう(笑)。アメリカでガンダムの実写映画製作のニュースを知って、“ケツアゴシャア”を思い出したファンは多かったようです。映画ではそういった事態を避けるためにも、オリジナルのストーリーとキャラクターにできるだけ近づけたほうがいいような気がします」(前出)
実は、実写を取り入れたガンダムはゲームソフトだけでなくほかにもある。ガンダム20周年記念作品として、2000年に日本でも放送された『G-SAVIOUR』という、カナダとの共同製作の単発テレビドラマだ。
ガンダムシリーズの宇宙世紀上で、現時点で最も未来となる宇宙世紀0223年を舞台にした作品となっている(いわゆる「ファーストガンダム」は0079年)。前出のアニメ関係者は言う。
「プレステのケツアゴに比べれば、実写パートの違和感はあまりない作品でした。CGのクオリティも当時としては非常に高いものだと思います。ですが、肝心の主人公機のガンダムが地味で全体的にメリハリもなく、演出が薄い印象でした。ガンダムを見ているというよりも、別のSFアクションを見ているような感じです。そのためか、のちに派生シリーズも製作されず、ガンダム関連の書籍などで扱われる機会も少ない作品になってしまっています」
“ケツアゴシャア”と不名誉な名前を付けられた実写版ゲームソフトに、印象の薄い実写ドラマ。そんな中での実写版映画の製作発表。今度こそファンを裏切ることはできないプレッシャーを抱えていると想像する。
「ガンダムの実写というのは、鬼門のような印象がありますが、ゴジラシリーズのクオリティが非常に高いことから“今度こそは”という見方もあります。だけど、『名探偵ピカチュウ』に登場したポケモンたちも、一部ファンから“そうじゃない”という描かれ方をしたのも事実なわけで(笑)。ガンダムではどんなモビルスーツが描かれ、どんなキャストが登場するのか、期待せず待ちたいところですね」(前出)
たとえどんなにヒットしたとしても、原作を超えるのは難しいところ。壮大な「黒歴史」作品とならないことを祈る。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉