木村監督の撮影方法は、キャメラを何台も同時に回し、すべてを1シーン1カットで撮影する。カットして撮り直しをしないことで、斬り合いのリズムもよくなるが、俳優の動き、殺陣の難度が格段に上がる。

「ごまかしがきかないからね。そんな現場の中で岡田さんは“こういう案はどうですか?”って、実際に動いてやってくれる。

『散り椿』の撮影中、監督への思いを「大作さんのいちばんの理解者でいたい」と語っていたという岡田准一
『散り椿』の撮影中、監督への思いを「大作さんのいちばんの理解者でいたい」と語っていたという岡田准一
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 岡田さんが言っていたけど、監督と俳優のセッションだよね。現場に入る前に、俳優さん自身が考えてきたことをテストで見せる。それがよかったら、そのまま本番ですよ。僕から“こうしろ”とかは、ほとんど言わない」

 主演俳優とのこのような関係は、以前に黒澤組で仕事をしていたときに木村監督はよく見ていた。

黒澤明と三船敏郎の関係

「黒澤さんと三船(敏郎)さんだよ。黒澤さんは三船さんに対して、何の注文もしない。三船さんはものすごく自分で考えてきて、ときにはセリフ回しも変えたりね。それでも黒澤さんはニコニコして見ていたね。ほかの俳優さんにはうるさかったけど(笑)、三船さんを怒鳴ったりしたことは見たことがない」

 黒澤監督と三船敏郎。ふたりの姿を、自分と岡田にかぶせているような木村監督。

「監督と俳優って、そうあるべきだというところが僕にはあって。岡田さんはね、撮影中は僕の部屋に“自分はこう思うけど、いいでしょうか”って話しに来てたよ。それを持ち帰って、また自分でいろいろ考えて。それを次の現場で出してくるんだよ」

 実は、次回作の構想を練っているという木村監督。

「今考えているのは現代劇。実現しないとこう言っても仕方ないけど、また岡田さんと仕事、したいね。監督と俳優は巡り合わせ。彼は僕の半分くらいの年だけど、尊敬してますよ」

  “レジェンド”にここまで言わせる存在の岡田。ジャニーズ俳優を、単なるアイドルとして片づけられない時代が来ているのかもしれない。