致命傷になる失言とならない失言の違い
過去、深夜番組内で「集団万引きを繰り返し、店を閉店に追い込んだ」と告白したあびる優(34)は問題外だが、仮に「赤信号だったけど車が走っていなかったので、横断歩道を渡った」と、このご時世に発しようものなら、“第五の権力”から火をつられてもおかしくないという。
前出のスポーツ紙記者が、「言葉や表現が制約されるようなものですから、芸能人、特にお笑い芸人はストレスがたまっているようです。“人を傷つけない笑い”などと称される第7世代は、時代に敏感なのでしょう」と語るように、芸能界も過渡期を迎えているといえそうだ。
そのうえで、失言をしたことで致命傷にいたる芸能人とそうではない芸能人がいる点も見逃せない。前述した長谷川豊、倖田來未、岡村隆史らは深手を負ったが、「どうして生まれてから大人になったときに照明さんになろうと思ったんだろう?」など独特の職業観を語った広瀬すずは、非難こそされたが、イメージの急落にはつながっていない。
この点について中川氏は、「変えられない現実に対して揶揄したり、バカにしたりする発言は、取り返しのつかない失言になっている傾向がある」と語る。
「倖田來未の発言は35歳以上の女性を傷つけ、長谷川豊も人工透析をしている病人を傷つけた。年齢や性差、障害、持病など変えることができない問題に直面している人や対象に対する失言は、暴言になる」
東日本大震災が起こった際、自身のツイッターで《くだらね、世の中チャリティ産業かょ!?》などとつぶやいたマリエは、同年ファッションの勉強という名目で、表舞台からしばらく姿を消した。被災地を傷つける配慮なき発言と受け取られても仕方ない。
一方、川越にレビュー投稿者は傷つけられたかもしれないが、貧乏な人がお金持ちになる余地はある。広瀬すずの件も、転職という余地がある。変えることが可能な問題の場合、延焼範囲が広がりづらく、他者に与える失言のイメージも根深くなりにくい。
「今回の脳みそ夫のアイヌ民族に対する失言も同様ですが、変えられない問題は人権団体などの抗議に発展する。失言をした芸能人への風当たりは強くなり、アレルギー反応を示す人も増えるため、芸能活動に大きな支障をきたしてしまう」
ただし、“老害”という言葉は、「権力者のイメージがあるので、判官びいきを好む日本人的にはグレーでしょう。ですが、変えられない問題ですから、いずれは失言案件になるのではないか」と苦笑する。
昨今は、ユーチューブに進出する芸能人も増えている。今後は、ユーチューブ発の失言も増えることが予想されるだけに、芸能人のみなさま、いま一度「舌は禍の根」であることをお忘れなく。
(取材・文/我妻アヅ子)