お弁当をわけてもうためのワザ

 そんなある日のこと。萩本さんは、同じ若手の漫才コンビ『青空球児・好児』の球児さんが、当時の大人気コメディアン・東八郎さんに対してやった、「お弁当をわけてもらうワザ」を見て、感心します。

 その日、東八郎師匠が楽屋入りするのを待ち構えていた球児さん。

 師匠が楽屋入りするのを見つけると、楽屋に届いていた東さん用のお弁当を手にとり、東さんの目の前へ駆け寄ります。そして、なんと弁当を勝手に開け、そのふたを東さんの目の前に差し出して、こう言ったのです。

「師匠、ここが空いてます」

 言われた東さん。「勘弁してくれよ~」と言いながらも、お弁当の中身を3分の1くらい、そのふたに乗せてあげたのです!

 それを横で見ていた萩本さん。「こんな手があったのか!」と思いました。

 さっそく次の日。東師匠が楽屋入りすると、前日の球児さんのマネをして、師匠用のお弁当を勝手に開けて、そのふたを、師匠の目の前に差し出しました。そして、

「師匠、ここが空いてます!」

「なんだ、おまえもマネすんのか……」

 タメ息をつく東師匠。萩本さんは、そのときの東師匠の顔を今でも覚えているといいます。

 師匠は、やれやれという顔をしながらも、お弁当をわけてくれたそうで。東八郎さん、本当に優しい人だったのですね。

 これが、ダウンタウンの浜田さんだったら、鼻の穴に指を突っ込まれてシバキ倒されるかもしれません。あくまで私の勝手なイメージですが……。