「俺がデビューしたときは、今のように音楽のジャンルも細分化されていなかったこともあり、誰もが知るヒット曲がたくさん生まれる最後の時代だったと思うんです。だからこそ、俺の曲も多くの方に知ってもらえたと思うので、いい時代にデビューできたなと思います」
1993年に発売した『Get Along Together-愛を贈りたいから-』が150万枚を超える大ヒットとなった山根康広。メジャーデビュー当時は会社員をしながら音楽活動を行っていた。
「もともと結婚する友人のために作った曲だったんです。最初はインディーズに近い形で1900枚程度しか発売していなくて。レンタルCDなどから徐々に人気に火がついて、東京のテレビに出させてもらったんです。そしたらどこで調べたのか、当時勤めていた会社に仕事以外の用件で電話がかかってくるようになってしまって……」
それをきっかけに、音楽活動に専念することを決める。
音楽だけでやっていける
「ある日課長に呼ばれて、“もう音楽だけでやっていけるんじゃないか?”と言われたこともあり、会社を辞めることにしました。その課長は理解があって、ラジオ出演する日も“打ち合わせってことにしておくから”と、快く俺を送り出してくれていましたね」
サブタイトル『-愛を贈りたいから-』をつけ、アレンジを加えてとり直して発売したところ大ヒット!
「最初に発売したときは、予算の関係でシンプルな弾き語りだったんですが、予算が増えてやりたかったバンドスタイルで収録して発売することができたんです。みなさんが知っているのは、たぶんとり直したバージョンのほうですね」
ディープ・パープルなど洋楽ロックに影響を受けて音楽を始めたものの、デビュー曲のヒットもあり、しばらくはバラードを歌うことに。
「当時のレコード会社から、3枚目のシングルまではバラードで行きたいと言われたんです。好きなロックテイストの曲はアルバムやライブで自由にやれば……と言われていたので、時間をかけて自分の音楽性を知ってもらえればいいかなとその提案を受け入れました」
30歳を過ぎたあたりから、好きなことができるようになったという山根。それに合わせ、ツアーのリストから代表曲『Get Along Together』をはずしていた時期もあった。
「自分の中でそのときの“推し曲”があったこともあり、当時の俺はこの曲だけじゃないと思ったわけです。でも活動を続けていくうちに、俺を知ってくれた出会いの曲を聴きたいお客さんが多いんだなと改めて感じて。それでお客さんが聴きたい曲を届けるべきだなと再び歌うようになりました」