2019年9月、茨城県境町の住宅で会社員の小林光則さん(当時48)と妻・美和さん(同50)が殺害され、子供2人が重軽傷を負った事件で、茨城県警は埼玉県三郷市在住の岡庭由征容疑者(26・無職)を夫妻に対する殺人容疑で逮捕した。
岡庭容疑者は自宅で就寝中だった夫妻を包丁のようなもので切りつけ、殺害した疑いがある。
昨年11月、埼玉県警は三郷市火災予防条例違反の疑いで岡庭容疑者を逮捕。続けて今年2月には茨城県警が、警察手帳を偽造販売したとして公記号偽造の容疑で逮捕していた。
「週刊女性」が当時報じた事件の一報を再公開する。(2021年2月16日公開。年齢・肩書き等は当時のまま)
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「第二の酒鬼薔薇聖斗」と呼ばれて
その男A(20代)の危険な行動については、近隣住民の間でも知れ渡っていた。
「彼が少年時代、猫の首を切り、その死骸を家の周りに埋めていたそうですね。警察犬を連れた捜査員が、捜索に当たっていたと聞きます」
「最近では、爆弾の材料を持っていたと近所の人が言っていました」
そんな悪い噂は広まる一方、Aの人となりについては、「本人を見かけたことがないからわからないんです」
とみな、一様に口にし、謎に包まれたままだ。
埼玉県三郷市の川沿いに立つAの家は、周囲がブロック塀で囲われ、敷地の中は二世帯住宅になっている。
ここからサバイバルナイフや鉈など計71本の刃物が埼玉県警に押収されたのは、今から10年近く前のこと。Aは当時、通信制高校の2年生で、2011年11月、同市の路上で中学3年の女子生徒のあごを刃物で刺してケガを負わせ、さらにその2週間後には、隣接する松戸市の路上で小学2年の女児の脇腹など数か所を刺し、殺人未遂の疑いで逮捕された。
この連続通り魔事件に加え、Aは猫の首を切断したり、放火を繰り返したりした。その行動の奇異性からネット上では、1997年に神戸市で起きた連続殺傷事件の犯人になぞらえて、「第二の酒鬼薔薇聖斗」とも呼ばれている。
昨年11月に元少年は逮捕された
そんなAの家に昨年11月、再び埼玉県警の捜査の手が入った。隣の茨城県警から「殺人のために使えるものを所持している」との情報提供を受け、家宅捜索したところ、硫黄約45キロが見つかったのだ。危険物貯蔵取り扱いの基準に反したとして、埼玉県警は三郷市火災予防条例違反の疑いで、無職のAを逮捕した。
現場には早朝から大勢の報道陣が詰めかけ、「通行止めになるほどだった」(近隣住民)という。
その理由は、Aがある未解決事件の捜査線上に浮上したためである。
その事件は、Aの家から北に約40キロ離れた、茨城県境町の民家で2019年9月に起きた。会社員の小林光則さん(当時48)と妻のパート従業員、美和さん(同50)が何者かに刃物で刺されて死亡し、中学生の長男(同13)と小学6年生の次女(同12)が重軽傷を負った。
茨城県警などによると、犯行時間は午前0時38分ごろ。美和さんが「助けて」と110番通報して事件が発覚。犯人は小林さん宅に侵入し、2階の寝室に直行。光則さんの胸や美和さんの首に刃物を突きつけて殺害した後、子ども2人の部屋に押し入り、足や腕などを切りつけた。
子ども2人の証言などから、犯人は帽子とマスク姿の知らない男で、ベッドで寝ていた子ども2人に「降りろ」と指示し、次女には催涙スプレーのようなものをかけたという。1階の部屋にいた大学3年生の長女(同21)は無傷だった。
現場からは、犯行に使われた刃物は見つかっておらず、部屋が荒らされた形跡もない。この状況から茨城県警は、怨恨による犯行の可能性が高いとみて捜査を続けてきた。地元の有志も、有力な情報提供者に懸賞金100万円をかけたが、犯人は特定されていない。
事件は迷宮入りしたかにみえたが、昨年11月に逮捕されたAが突如として捜査線上に浮かび上がり、一部週刊誌がそれを報じた。