先日、石井さんはテレビ番組にゲストとして招かれた際、「不登校という生き方」やフリースクールなどについて解説した。
「番組で、司会者の男性が突然、“これから新しい教育が始まろうとしているんですね”と私に言ったんです。びっくりしました。その司会者は団塊の世代の方ですから、学生時代は生徒もたくさんいて、学校もすごく楽しかったんだろうと思うんですね。夢も希望もあっただろうし。そんな素晴らしい記憶のある学校に“行きたくない”と言われたら、自分が否定されたような気持ちになっても不思議じゃない。
でも、司会者の男性は今の子どもたちにとって“これから新しいことが始まろうとしているんだ”と、そういう空気を感じていらっしゃった。私も、そうあるべきだと思います」
その一方で、コロナ禍のもと、昨年は小中学生の自殺が過去最多になった。不登校新聞では子どもの自殺増加を防ぐため警鐘を鳴らしている。
「4人に1人の子どもが死にたいと考えているというデータもあります。長引くコロナ禍は心にも深刻な影響を与えている。だから、あらためて注意喚起が必要です。特に連休明けは、不登校や体調不良という形でSOSが出ることもあります」
そうした場合、「TALKの原則」が有効だと石井さんは言う。
「まず“Tell”。“私はあなたを心配している”と伝えて、“だから話を聞かせてくれないか”と投げかける。次に“Ask”。質問は、率直にすることです。“死んでしまいたい気持ちなの?”とはっきり尋ねる。
次に“Listen”。相手が話し始めたら、最後まで傾聴する。最後に“Keep safe”。危ないと思ったら安全を確保する。自傷行為があれば、そばを離れない。もし、いじめがあったら学校に行かせない。いじめって暴力ですから、暴力がある学校から強引に引き離すことも大事です」
'15年8月22日、不登校新聞の主催による「登校拒否・不登校を考える全国合宿in山口」に、亡き樹木希林さんが登壇した。そこで寄せられたメッセージは、不登校やコロナ禍での子どもの自殺が増えている今、示唆に富んでいる。抜粋して紹介しよう。
《“ずっと不登校でいる”というのは子ども自身、すごく辛抱がいることだと思う。学校には行かないかもしれないけど、自分が存在することで、他人や世の中をちょっとウキウキさせることができるものと出会える。そういう機会って絶対訪れます》
《自殺するよりも、もうちょっとだけ待ってほしいの。そして、世の中をこう、じっと見ててほしいのね。あなたを必要としてくれる人や物が見つかるから。だって、世の中に必要のない人間なんていないんだから。私も全身にがんを患ったけれど、大丈夫。私みたいに歳をとれば、がんとか脳卒中とか、死ぬ理由はいっぱいあるから。無理して、いま死ななくてもいいじゃない。だからさ、それまでずっと居てよ、フラフラとさ》
石井さんは、最後にこれだけは伝えたいと言って、こう切り出した。
「不登校になって学校に行かなくなったら、学力はどうなってしまうの? こうした親の声は必ず出てきます。でも、学力と命を天秤にかけないことです。これを心からお願いしたいと思います」
〈取材・文/小泉カツミ〉