業界内で要注目の子役・川原瑛都
ここまでの放送では、毎回視聴者の涙を誘うようなシーンがあり、まだ見たことがない人のためにいくつか挙げておこう。
狩野から「親はいないのか」と聞かれたコタローが「いたが……おらぬ」と正直に答える。すると狩野は自分も子どものときに両親を事故で亡くしたことを打ち明けるなど、不器用ながらも寄り添おうとして2人の距離が少しだけ縮まった。
コタローは自分が転んでも「わらわは泣くのは嫌ぞ」と泣かない(泣いても助けてくれる人がいないから)のに、大人の美月が泣いていたことに気づいて目を冷やしてあげようとする。狩野が「なぜ気づいたのか」と聞くと、コタローは「わらわは大人が泣いている姿をよく目の当たりにしてきた」と今はいない母親の存在をにおわせた。
15日に放送された第4話でも、ほかの園児と楽しげに話していた狩野を見たコタローが、「わらわの友だちとワイワイしていたであろう。おぬしはわらわの保護者ではないのか」と初めてすねるシーンがあった。
事実上の主役であるコタローに注目が集まるのは当然だが、「ほぼ無表情で感情を消しているが、時折うれしさや寂しさがにじみ出る」「好きなアニメと同じ殿様語で話す」という難役。
しかし、川原瑛都は「累計100万部超を誇る人気原作漫画のコタローを見事に実写化できている」と評判であり、業界内の評価も上々と聞いた。
現在7歳であり、『マルモのおきて』当時の芦田愛菜や鈴木福と同年代。これまで朝ドラ『とと姉ちゃん』(NHK)に出演したほか、『カンナさーん!』(TBS系)では主人公・カンナ(渡辺直美)の息子役を演じた。さらにダンスや歌が得意というだけに、「パプリカ」を歌ったFoorinのようなキッズユニット参加の期待もできそうだ。
一方の自堕落な生活を送る売れない漫画家・狩野を演じる横山裕も、まさにハマリ役。粗野でテキトーな性格だが、「コタローからゴミだらけの部屋を指摘されてゴミ出しをするようになる」などの素直さを感じさせる人物を体現している。
10年前を振り返ると阿部サダヲは『マルモのおきて』が民放連ドラ初主演作であり、出世作となった。横山も当作が連ドラ初主演であり、この様子なら早い段階で次のチャンスが訪れるのではないか。
木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。