1月に公開された両陛下による新年のビデオメッセージでは「安心して暮らせる日が必ずや遠くない将来に来ることを信じ、みなが互いに思いやりを持って助け合い、支え合いながら、進んでいくことを心から願っています」と述べられ、国民を鼓舞された。
さらに、直近で行われた6月21日の『日本学士院授賞式』では、
「わが国を含め世界各国は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という大変に厳しい試練に直面しています。この試練を乗り越えるためには、国内外を問わず、私たちが、なお一層心をひとつにして協力していくことが大切です」
と、以前よりも強い表現でスピーチされた。
皇室の存在意義が国民に確認された
昨年4月から今年6月にわたって実に計10回、コロナに関する発言をされてきた陛下。
「日本の“象徴”である以上、政治に関与することができませんが、その分ご自身がおことばを述べられる機会をとても大切にされています。国がひとつとなってコロナに立ち向かうため、“肉声”を通して政府や国民に何度も訴えかけてこられました。しかし、コロナ対策が万全とはいえないまま“五輪ありき”を貫く政府には響かず、“空振り”だったということです」(皇室ジャーナリスト)
陛下は五輪直前に“最後の一手”を投じられた。前出の小田部教授は、陛下のご決断をこう分析する。
「令和の天皇として、行事の運営について主体的なメッセージを国民へ伝えられたのは初めてのことです。現代の皇室は国民とともに歩まれ、触れ合うことを重視されているため、コロナ禍による活動の停滞は皇室の存在意義に関わる極めて深刻な状況でした。しかし、今回のように天皇が自分の本意を内外の人々にお伝えになったことで、改めて皇室の存在意義が国民に再確認されたと思います」
異例の“苦言”は、東京五輪にどんな影響を及ぼすのだろうか─。