また、同じ朝日放送制作の長寿番組で「アタック25」の前に放送している「新婚さんいらっしゃい!」も主に中高年層向けの番組だけに、今後どうしていくのか。こちらも視聴者参加型の番組であり、その去就が注目を集めていくでしょう。
「長寿番組の終了」には説明が必要
本来、長寿番組は高齢化社会が進む中、テレビ局にとって貴重な財産。中高年層のファンを楽しませられるだけでなく、長年愛された普遍的なフォーマットは、工夫次第で若年層にも訴求できるはずです。
なかでも「アタック25」は、昭和時代に手掛けたスタッフと初代司会者・児玉清さんによる貴重なレガシー。今回の報道に際して「果たせなかった海外旅行獲得の夢を、子供たちに託していただけに、その夢がついえてしまうことがなんとも残念」というコメントがあったように、祖父母・父母・子供の3代で楽しめる数少ないコンテンツです。
気がかりなのは、このところ各局で長寿番組を終了させる動きが続いていること。どの局も「レガシーを継承していく」という意識が薄く、それよりも「目の前の数字を取っていかなければやっていけない」という追い込まれた状況にあるのかもしれません。
前述したようにクイズ熱は若年層にも高く、ほかに視聴者参加型の番組がほとんどない今、「アタック25」は目の前の数字では測れない価値を持っている番組なのです。制作サイドはそんな本当の価値に気づいているのか? 十分な議論を重ねた上での終了なのか? あまりにファンが多く、「日曜昼に放送しているのが当然」と思われている番組だけに、制作サイドからの説明が必要でしょう。
今回、番組終了を報じる記事のコメント欄やSNSには、「単純だけど奥が深いクイズ番組だった」「パネルを取る戦略性が勝負を決める面白さは単なるクイズ番組の枠を超えている」「『自分もいけるかも』と希望を持たせる絶妙な難易度の問題がよかった」「台本があるような芸能人のクイズ番組はつまらない」「残酷なまでの逆転劇が昭和の番組っぽくていいのに」などと、さまざまな魅力を挙げる人々の声が続出していました。
これらの反響を見て、「やっぱりレギュラー放送を続けたほうがいいのではないか」という議論が起きる……そんな柔軟性が持てたら、テレビ業界の未来は決して暗くはないような気がするのです。
木村 隆志(きむら たかし)◎コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。