《5時21分 車でつっこんで、車が使えなくなったらナイフを使います みんなさようなら》
《12時10分 時間です》
2008年6月8日、加藤智大(当時25=死刑囚)が東京・秋葉原で通り魔事件を起こした。2tトラックで中央通りの交差点に突っ込み、横断中の歩行者5人をはねたあと、通行人や警察官をダガーナイフで切りつけた。その結果、7人が死亡。10人が重軽傷を負った。
ネットに居場所を求めてさまよう人たち
当初、非正規雇用の劣悪な待遇への不満が犯行理由と思われていた。だが、裁判で明らかになった動機は別のところにあった。ネット上のトラブルが要因だったのだ。
このころ、ガラケーでしかアクセスできないサイトがあった。加藤はそうしたサイトのひとつ、匿名で書き込める掲示板へ日参していた。
加藤は獄中出版した手記『解』の中で、こう述べている。
《ネット上での出来事は非現実であるかのような言われ方をすることがありますが、ネット上は、仮想空間ではあっても非現実のものではなく、れっきとした現実です》
秋葉原通り魔事件の発生から今年で13年がたつ。いまやインターネットは広く普及し、SNSが災害時の連絡手段として機能するなど、生活に欠かせない存在となった。その一方で、トラブルや事件も頻発している。
ネット犯罪の変遷をたどりながら、それでもネットに居場所を求めてさまよう人たちの姿を追いかけてみよう。
ネット上のトラブルを発端とした殺人事件に、'04年6月に起きた「佐世保小6女児同級生殺害事件」がある。長崎県佐世保市の小学6年の女児が給食の準備中、同級生を殺害した。舞台になったのはコミュニティサイトだ。そこではウェブ日記を書くことができ、掲示板でのやりとりも可能。被害女児が加害女児に対し“言い方がぶりっこだ”と書き込み、削除しても再び同様の書き込みをするなど複数のトラブルが背景にあった。
佐世保の事件後、文部科学省は掲示板やネットいじめを予防・対処する「情報モラル教育」を加速させる。'08年には社会問題となっていた、いわゆる「学校裏サイト」の実態調査が行われた。誹謗中傷が多いことがわかり、利用上の課題となり始めた。