芸能界は周りからはみ出ないと生き残れない
梅沢 MCに「好きな食べ物はなんですか?」って聞かれたら、しゃべりたいことをのみ込んで「別に……」と答えてたんだから(笑)。前に沢尻エリカが映画の舞台挨拶で「別に」ってコメントして大騒ぎになったけど、昭和50年代の役者はあれが普通だったね。
原田 今とは完全に真逆の世界ですね。
梅沢 ただ俺はテレビで売れたあとすぐに舞台に戻っちゃったから、昔の芸能界しか知らないわけ。それから10年近くたってテレビに出たら雰囲気がガラッと変わっててさ。それでも俺はあのころと同じ不遜な態度のままでいたら、逆にそれがウケちゃったんだよな。
原田 今は梅沢さんのように、自分の気持ちを素直にズバッと言う人がいないから、見ていて痛快なんですよね。
梅沢 やっぱり、芸能界はそうやって周りからはみ出ないと生き残れない世界なのよ。格闘技と同じで、強い者しか残らない。俺だって逮捕されないなら同業者の水に毒を盛りたいくらいだよ。
原田 すごくわかります! 僕も同業者は全員ライバルだと思っているので、役者の友人はいないんです。
梅沢 そうそう。役者同士は本当の意味で仲よくなんかできないよ。俺は小さいころから旅芸人と呼ばれて、いろんな差別も受けてきたから自然とハングリー精神が身についたのはありがたいと思うよ。おかげでどれだけ売れても天狗になったことがない。周りが変わるっていうけど、本人が流されなきゃいいだけの話だもんな。
原田 おっしゃるとおりだと思います。梅沢さんは自分らしく人生を歩んでいるイメージなんですけど、何か悔いていることってありますか?
梅沢 高倉健さんの映画『居酒屋兆治』の出演依頼を断ったことだな。それが俺の人生唯一の後悔だよ。
原田 えー! どうして!?
梅沢 そりゃあ高倉健さんから「一緒にやりませんか?」って電話で誘われたときはうれしくて「はい、わかりました!」って言いましたよ。
それからすぐに恩人の高橋一郎監督に報告したら、監督に「主役か?」って聞かれて「いえ、高倉健さんの映画です」と答えたんだよ。そしたら「せっかくスターになったんだから脇役はやるな。きっとすぐに主役の話が来るから」って諭されて断っちゃった。