だが、これらの治療を受けてもSASは完治はしない。

「ただ、治療を続けることで快適な睡眠をとることができ、SASの症状の改善も期待できます」

 また、自分でできるSASの予防や改善方法もある。

「禁煙やダイエット、飲酒量や塩分を控えること、舌や口まわりの筋肉を鍛える体操などは、SASの予防や改善につながります。しかし、SASは自然治癒しない疾患です。気になる症状があるときには、“睡眠外来”や“睡眠時無呼吸外来”といった科目を掲げている病院の受診をおすすめします」

日常でできる予防法

ダイエット……肥満で首まわりの皮下脂肪が厚くなると上気道が狭くなってしまう。ダイエットで肥満の解消を。

禁煙……喫煙はのどの粘膜の炎症やむくみの原因となり、SASを3~4倍増加させるといわれている。

鼻炎の治療……鼻が詰まると鼻からの気流が減少し、のどを広げる圧力が弱まる。鼻炎を治療し鼻の通りをよくすることも大切。

ベロ体操……「あ~」「い~」「う~」「べ~」とそれぞれ口を大きく動かして1秒キープ。口元の筋肉が鍛えられる。

横向きに寝る……あおむけに寝ると重力の影響で舌が落ち込み気道が狭くなりがち。就寝時には舌の落下が起きにくい横向き寝で。

飲酒量を控える……アルコールには筋肉を弛緩させる作用が。舌やあごの筋肉が緩んで気道を圧迫してしまわないよう飲酒は適量を。

保険適用もできる最新の治療法

CPAP療法

 シリコーン製エアチューブのマスクを鼻か口に取りつけて、CPAP装置からホースとマスクを介して圧力を加えた空気を送り込み気道の閉塞を防ぐ。SAS治療の標準的治療法。適切な治療を行えばその日から快適な睡眠がとれる。SASの根本的な治療はなく、CPAP療法は継続して行う。健康保険3割負担で月に約4500円。

装置はより小型化・軽量化が進んでいる(写真はイメージです)
装置はより小型化・軽量化が進んでいる(写真はイメージです)

マウスピース

「スリープスプリント」と呼ばれるマウスピースをはめ込むことで舌の落ち込みを防ぎ正常な上気道を維持。SAS治療のマウスピースには上下一体型(保険適用で2万~3万円程度)と、上下分離型(保険適用外で15万~20万円程度)の2種類がある。いずれも専門の歯科医がひとりひとりに合わせて作製する。

教えてくれたのは●みやざきRCクリニック 宮崎雅樹(みやざき・まさき)先生●2006年群馬大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院呼吸器内科助教などを経て2016年に現クリニックを開院。『林修の今でしょ!講座』などテレビ出演多数。著書『長生きしたけりゃ肺を鍛えなさい』(エクスナレッジ)。

(取材・文/熊谷あづさ)