母が大切にしまっていたもの
翌’46年8月、父親と合流して日本に帰国。父親の故郷・大分県で暮らした。一成さんは熊本の大学に進学後、日立製作所で研究職として働き、職場で知り合った3歳年下の夫人との間に2男1女をもうけた。母・千代子さんは’83年、胃がんで77年の生涯を終えた。
遺品整理をしていたときのことだった。
「タンスのいちばん奥の母の衣服の下から、乾燥した妹の最後のおむつが出てきたんです。母は戦後、妹の話をしようとはしなかった。でも、忘れられなかったんでしょう。大切にしまってありました」
そう言葉を噛みしめた。
※2017年取材(初出:週刊女性2017年8月15日号)
◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する