54歳の寄席芸人が亡くなったことが、演芸界に動揺を広げている。

 落語家の三遊亭多歌介さんが27日午後2時40分、新型コロナウイルス感染症のため死去した。

コロナは単なる風邪、ワクチンは無意味

 これまで寄席演芸界では、ベテラン落語家の鈴々舎馬風(82)や前座らが感染していた。つい最近もなぞかけ漫談家のねづっち(46)が闘病生活を送るなど世間同様感染が広がっているが、死者が出たのは初めて。

「54歳といえば、我々の世界では若手。亡くなる10日前、鈴本演芸場の高座に上がっていましたから、感染から死去まであっという間の出来事です。どこで感染したのか特定できるのか、濃厚接触者指定されるのかわかりませんが、とにかくみんな怖がっている」

 と表情を曇らせるのは演芸関係者だ。多歌介さんは、痛風の持病があったという。落語のほかにも講演の仕事が多かったという多歌介さんは、

「講演では、コロナをそんな恐れてはいけないとか、笑いで免疫力を上げようとか、コロナのことを笑い飛ばしていたそうです。同業者に対しても『コロナは単なる風邪だ』と言い張ったり、『ワクチンは打たないほうがいいよ。俺は打たないから』と堂々と宣言していました。冗談なのか本気なのか、どっちつかずの口調でしたが、コロナは撃退できると真剣に思い込んでいる節はありましたね」(前出・演芸関係者)

 ブログでは「全く無意味なワクチン!!2回目接種で相当数の方々が感染者になってます、何より危険な物なのになんで接種をすすめるのかのお?」「諸悪の根源はPCR検査!!」などと発信していたが、コロナウイルスにはかなわなかった。

 弟弟子の三遊亭鬼丸(48)は、ツイッターで「今日三遊亭多歌介兄さんが逝去。ワクチンを否定した兄さんがコロナで。」と悼んだ。そして「だから皆さんはワクチンを打ってください。色々反対派がいるのはわかりますが千葉真一さんも打たずに死んでますから。」と兄弟子を反面教師にし、積極的接種を呼びかけた。

 ワクチン接種をめぐっては、

 賛成派・反対派に色分けされる昨今で、29日にはコピーライターの糸井重里さん(72)がツイッターで、反ワクチン派の人びとに対し「『こりゃまずいかな?』と思ったら、ひっそりとでもワクチンを接種してほしいです」と訴えたばかり。

 50代、痛風の持病、加えて肥満気味の体形だった多歌介さん。自らが軽んじたコロナウイルスの怖さを、死を賭して訴える結果になった。合掌。

〈取材・文/薮入うらら〉