「憎いけれども見捨てられない」母親の慟哭
改めて翌日、自宅にいる母親を訪ねてみた。すると、
「本当にすみません……。もうどうしていいのか……。息子は完全に(性犯罪の)依存症です……」
と息子の“暴走”に手がつけられない様子だった。
「刑務所にいたときも毎週、手紙のやりとりをして、反省の言葉を聞いていました。それなのに、またやってしまった。後で捕まるのがわかっているのに、それでも抑えられないんです」(母親、以下同)
悪行を重ねる息子に両親ともお手上げ状態だが、それでも実家に住まわせ続けている。
「家を追い出したら誰も見張る人がいなくなってかえって危険かと思って。結局、また防げませんでしたが……。
これほどの悪人でも、自分の産んだ子ですから、憎いけれども見捨てられない。それでも、これからどうしたらいいのか……」
と泣きながら途方に暮れる。
失うものがないから、ブレーキがかからない
容疑者が更生する可能性はあるのか。新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(犯罪心理学)に話を聞いた。
「これほど何度も犯行を重ねているとなると、もはや刑罰に犯罪抑止効果は期待できません。失うものがないから、ブレーキがかからない」
では、どうすればいいのか。
「社会的制裁を加えたり、“犯罪は駄目”と言葉で伝えたりしても、無意味なんです。
被害者を思うとやりきれない気持ちもありますが、あくまで再犯を防ぐという意味では、本人を孤立させず、失いたくないと思えるような新しい生活を手に入れてもらうことが必要でしょう」
国には更生に向けたプログラムも存在する。しかし実際に受けることが命じられるのは一部の重大犯罪者のみ。ほかは更生もなく出所できてしまうので、後から自費で受講しない限り、更生する機会はない。
現在の日本では「犯罪者の人権」を理由に性犯罪が非常に軽い罪となっている。多くの性犯罪者は数年以内の短い刑期で出所して(もしくは示談などで不起訴となって)野に放たれるため、再犯に至るケースが多発している。
犯罪者が法によって守られ、被害者の女性が自衛意識を高めることを強いられるのが、今の日本の現状だ。