母乳が出づらいのに母乳育児の大切さを説かれて
その後、光代さんは産後に母乳が出なくて困っていました。母乳についてはデリケートな話題のため、同じ育児中のママにしか相談しづらいものかもしれません。光代さんはつい、その悩みを果歩さんにメッセージで打ち明けてしまい、後悔したと言います。
「母乳育児は向こうが先輩だったので、こうすればいいというアドバイスをもらえると思ったんです。彼女は『完母』と呼ばれる“完全母乳”で、ミルクを飲ませない方法を行っていました。私が赤ちゃんにミルクを与えていると知ると、『弱い子どもになる』と決めつけてきました。そして母乳が出るようになる◯◯式という方法をすすめてきたんです。もちろん、そのやり方でうまくいったママ友もいたのですが、“母乳が出ないとダメだ”という彼女の言い方に傷つきましたね……」
加えて、母乳が出にくいママにとっては、哺乳瓶でミルクを与えることに罪悪感を抱くケースもあるそうです。
「果歩さんと出産後にショッピングモールで会ったときなど、自分は母乳が出なかったので、果歩さんが目の前で授乳をしているのを見るのがつらいこともありました」
と光代さんは話します。
このように、相手よりも経験があることに対して、親切のつもりで自分のやり方をすすめてしまうのは、特にママ友同士ではよくあることだと思います。
育児は時代によって対処法が異なることもあります。例えば、ここ数年では液体ミルクが商品化されたり、抱っこ紐での抱っこの仕方が、対面ではなく赤ちゃんが正面を向く抱っこの仕方になったりと、その時々によって変化していきます。妊娠や育児に関しては、それぞれ価値観などが違うため正解はないと言えますから、子どもや周りに自分のルールを押しつけると、嫌がられる要因になることもあるでしょう。
とにかく自分の意見が正しいと思ってひかない、果歩さんのようなママ友とのつき合いは、相手に合わせていると疲れてしまうかもしれません。子どもの通っている学校が変われば会う機会も減りますから、ママ友関係は学生時代の友人とは違い、あくまで子どもを介した付き合いと割り切ることも大切です。すべてを取り入れるわけではなく、参考にできることは話を聞いて、あとは受け流すような距離感の取り方が必要ではないしょうか。
池守りぜね◎東京都生まれ。フリーライター。大学卒業後、インプレスに入社。ネットメディアで記者を務めた。その後、出版社勤務を経て独立。育児、グルメ、エンタメに関する記事のほか、インタビューも多数執筆。『一瞬と永遠』、『絶叫2』など、映像脚本も手掛ける。プライベートでは女児のママ。Twitter:@rizeneration