北野が出演した期間には、司会者が巨泉さんから徳光和夫にバトンタッチしているが、2人をこう絶賛する。

巨泉さんはズケズケとモノを言うイメージがあると思いますが、素人参加者には絶対に毒を吐かないんです。またおかしな回答をしたときは、回答に対してバカにすることはありましたが、回答者の人間性を否定することはしない。そういう絶妙な線引きがあったからこそ、エンターテイメントとして成立していたんだなと。徳光さんは反対に回答者を持ち上げることで、現場の雰囲気をよくするタイプでしたね」

 回答者でガッツ石松が出演した際の珍発言が、いまでも忘れないそう。

「僕のことを“おおのぺいさん”と呼ぶんです。なんでだろう? と思ったら、ネームプレートを逆から読んでいたらしく、“大野北”という名前だと勘違いしていて(笑)。そう間違えるか! と新鮮でしたね」

大学教授と並行して番組出演

『クイズダービー』出演後は別の番組からのオファーが増えたものの、あるルールを決めていたという。

テレビに出ることによって、本業が疎かになっているとは絶対に思われたくなかったので、大学の授業は絶対に休まなかったですね。テレビ出演や講演会の依頼は、事務所にもお願いして本業の仕事のない時間だけ入れてもらうようにしていました。番組内でも自分の専門分野のクイズだけは絶対に間違えないでおこうと、そこだけは頑張っていました」

 そして、笑いながら最後にこう答えた。

「今、番組に出たら当時より正解率はきっと低いでしょうね(笑)。年々、エンタメや世間の流行に疎(うと)くなっているので。でも、プロデューサーが話していたように全員が正解しても面白くはないし、改めて回答者それぞれの個性が光っていた絶妙なキャスティングだったなと思います」

北野大 '42年5月29日生まれ。東京都出身。秋草学園短期大学学長。ビートたけしの兄としても知られる。'87年『関口宏のサンデーモーニング』(TBS系)にコメンテーターとして出演したのを機に、タレント活動も行う