意欲を見せる場所に『九月大歌舞伎』を選んだことも、大きな意味があるようだ。
「この公演は“六世中村歌右衛門二十年祭”と“七世中村芝翫十年祭”に位置づけられる“追善公演”といって故人となった俳優の回忌の年に、その冥福を祈って行われるものです。
現代歌舞伎界を代表する名優といわれた十七代目中村勘三郎さんが“歌舞伎の真髄は襲名と追善と見つけたり”と語ったほど、襲名と同じくらい大切な行事です。
福助さんは、先代と息子の児太郎くんのためにも、この九月大歌舞伎で完全復活をアピールしたかったのでしょう」(喜熨斗氏)
福助本人に直撃すると……
ますます現実味を帯びだした福助の“ダブル襲名”の気運。九月大歌舞伎の幕開きで見せた力強い歩みは襲名への布石なのだろうか─。
9月上旬、自宅から妻とともに姿を現した福助を直撃した。
─歌舞伎座での再復帰おめでとうございます。
「ありがとうございます」
─今回の出演を、ダブル襲名の布石と見ている人も多いと思うのですが?
「…………」
突然の質問にも快く対応してくれたが、襲名の話になると何も言わずにタクシーに乗り込んでしまった。
隣にいた妻も「話せることと話せないことがありますので……」と明言を避けた。
「松竹としても“ダブル襲名公演”を実現させたい気持ちは強い。同じようにダブル襲名が延期になっている海老蔵さんの動向も気になります。コロナが明けた後に團十郎と歌右衛門という大名跡が復活すれば、歌舞伎界は大いに盛り上がるでしょうね」(前出・石川氏)