民間組織である社協を新庁舎に迎え、身内を外に出す不思議
社会福祉協議会が新庁舎に入ることは、当初から決まっていたらしい。思わず首をひねりたくなるのだが、社会福祉協議会は民間の社会福祉活動を推進することを目的とした民間組織である。連携が必要な場合も多いが、どうしても庁舎内に常駐する必要があるとはいえない。現に、他区でも社会福祉協議会が庁舎から離れた場所にあることはよくあることだ。
中野区では、その社会福祉協議会の職員が新庁舎に入り、代わりに生活保護課が庁舎から出て、スマイル中野に入るということになった。
7月30日の厚生委員会で決まったこの新案を、現場の職員は突然聞かされて仰天することになる。
なぜなら、区は福祉課を外に出すと決定した2020年3月に、その理由を「新型コロナウィルス感染症の影響もございまして、(生活保護利用者の)相当数の増加が見込まれてございます。」と述べており、利用者増、職員増を見込んで広い場所が必要ということなのだが、3月の段階で感染拡大や区民の生活困窮を予測していたのだとしたら、それはそれですごい。
生活保護利用者の増加に伴う職員増員も考慮した上での「生活保護課の庁外移転」だったはずなのに、最終的に落ち着いたスマイル中野の床面積が、現状の550平方メートルより更に狭い360平方メートルという結論に「え、え??」となるのは道理である。
550平方メートルでも手狭だった事務所が360平方メートルになって、職員が収まりきるわけがない。そこで、当局は奇案を提案した。生活保護課を二つに分ける。つまり、こうだ。
・生活相談、自立支援、中野くらしサポート→新庁舎
・生活保護課→スマイル中野
ちょっと待って、ワンストップどこに行った?
あなたが将来、生活に困窮し、生活保護の申請を考えるとする。まず、申請は新庁舎だ。そこで相談をし申請に至る。しかし、保護が決定したあとはスマイル中野に行ってくださいねと言われる。スマイル中野で担当ケースワーカーと会い、その後、必要に応じて住民票を取得したり、稼働年齢であれば就労相談をしてくださいという話になるが、それは新庁舎が窓口となる。
新庁舎にいる生活援護課(最初に相談する課)と生活保護課(利用開始後に担当になる課)の連携は必要不可欠であるが、離れてしまって業務は成立するのだろうか。情報の伝達時にはIT技術を頼るのだろうが、高いセキュリティを搭載したプログラムはいくらするのだろう。
また、生活保護課は大きな現金が動く課でもある。今後はお金を運ぶ警備員がずっと必要になるだろう。いくらかかるのだろうか。
そして何より、区民の利便性はどこに行ったのだろうか?
二転三転した新区役所の企画は、一体だれ得なのだろう? 考え込むほどにデメリット以外なにもないものに仕上がってしまっている。