コロナは描かれるのか?

 今後が不透明なのはモネの2歳下の妹・未知(蒔田彩珠)だ。宮城県水産試験場の研究科に勤務する未知は東京国際海洋大学の研究室から誘われている。101話(2019年)で分かった。高温に強いワカメの種苗を発見するなど優秀だからだ。

 未知はモネに対し「公務員やりながら研究するほうが安定している」「東京、苦手だし」と大学行きを否定したものの、行きたい気持ちもあるようだ。秘かに2020年度入学のAO入試の要項をネットで調べていた。

 未知は高卒後に就職した。第33話(2015年)で父・耕治(内野聖陽)は進学を勧めたが、「私はすぐに働きたいの!」と突っぱねた。それなのに大学に心が動き始めたのはモネが帰郷したから。

 未知は自分のせいでモネが高卒後に亀島を出ていったことを知っていた。モネが東日本震災時に島にいなかったことを責めたからだ。だから、自分は島に残り、家族と一緒に暮らさなくてはならないという使命感を抱いていた。

 もっとも、姉妹は第94話(2019年)で8年半ぶりに和解。だからモネは家に帰ってきた。これによって未知は解放された。ただし、片思いを続けてきた漁師の及川亮(永瀬廉)との問題が残されている。

 耕治は2020年4月から勤務先のみやぎ銀行で本店営業部長になることが決まっている。母・亜哉子(鈴木京香)はモネと未知に向かって「本店の営業部長ってすごいのよ」と説明したが、確かに実際の銀行でも大抵は役員コースだ。

 栄転後の耕治は仙台に単身赴任する予定だが、ここにきて家業であるカキの養殖業を継ぐ可能性も出てきた。「私が継ぐ」と言い始めた未知を自由にしてあげたいからだ。

 亜哉子は耕治が反対しているものの、亡き義母・雅代(竹下景子)の跡を継ぎ、自宅で民宿を始めるはず。雅代のようになることが目標だからである。

 2020年は永浦家にとって新たなスタートになりそうだが、それは困難な日々の始まりかも知れない。誰もが知るとおり、同年1月から日本はコロナ禍に見舞われたからだ。

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 この朝ドラの脚本を書いている安達奈緒子さんはNHK『透明なゆりかご』(2018年)などを過去に手掛けてきたが、持ち味の1つはリアルな作風。この朝ドラも現実離れしたエピソードがなかった。モネらが間もなく迎える2020年も描くとすれば、たぶんコロナ禍から逃げないだろう。

 コロナ禍も盛り込まれるとしたら、永浦家はどうなるのだろう。耕治は予定どおり単身赴任するのか。亜哉子は民宿をやれるのだろうか。もちろん医師の菅波も気になる。物語では既に2019年後半。コロナ禍突入の直前で終わったら、それも不自然だろう。その後の永浦家や菅波の苦労を想像してしまい、かえって悲しくなる気がする。

 撮影は9月3日に終わっているものの、今後の物語はトップシークレット扱い。どの朝ドラもそう。どんな結末が用意されているのか注目される。

 まだ気になることがある。モネと未知の祖父・龍己の体調だ。第91話(2019年)の突風で壊れたカキ棚を直そうとしなかった。気力、体力ともに衰えたように映る。

「残った棚だけでやるのが今の俺にはちょうど良いんだよ」(第101話の龍己)

 龍己は永浦家の背骨のような存在で、家族を精神面で支えてきた。まだ元気でいてほしい。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立