身体を冷やす口呼吸をやめる

 そもそも、なぜ鼻呼吸が身体にいいのだろうか。

「人間の鼻には空気の浄化作用のほか、乾燥と温度変化から身体を守る役割があります」

 鼻毛や粘膜に覆われた鼻腔内を通り体内に取り込まれる空気は、チリやウイルス・細菌などを濾過し、途中の上咽頭部分の扁桃リンパ組織がさらに防御して異物が肺に入るのを防いでくれる。さらに鼻腔内は常時適度に湿りけを帯びているため、冷たく乾燥した空気が取り込まれると速やかに湿度と温度を与えてくれるのだ。逆に口呼吸は「熱のロスが大きく、身体を冷やします」

 わかりやすくいうと犬がハアハアと口呼吸するのは、体内にたまった熱を逃がし体温調節をするためだが、これと同様に、人間の口呼吸も身体を冷やしてしまうのだ。身体の冷えは免疫力の低下を招き、ひいては前ページで列挙したような身体全体の不調を引き起こす。

 例えば、中高年女性の多くが悩まされる夜間頻尿もそのひとつだ(下参照)。いびきの重篤化である睡眠時無呼吸症候群から起こる夜間頻尿。そして、その睡眠不足からほかの不調が生まれる可能性も。口呼吸はつまり、万病のもとであるといっていい。

夜間頻尿が起こる仕組み
夜中のトイレも口呼吸が原因だった!?
夜中のトイレも口呼吸が原因だった!?

睡眠時無呼吸症候群

睡眠の質が下がり、交感神経が
優位のままの状態に

いびきをかく

心臓に負担がかかる

利尿作用のある
ホルモンが分泌される

頻尿に
※横になると心臓から腎臓へ送られる血液の量が急激に増加し、大量の尿が作られる

正しい舌の位置を意識する

口を閉じたとき、舌が上顎(口蓋)にくっつき、舌の先端が上の前歯の根元より少し内側(のど側)についているのが正しい位置
口を閉じたとき、舌が上顎(口蓋)にくっつき、舌の先端が上の前歯の根元より少し内側(のど側)についているのが正しい位置

 口呼吸になる原因にはさまざまなものがあるが、加齢によって舌の力が弱まることも大きな原因のひとつだ。舌の力を測るには、舌が正しい位置にあるかどうかを確認しよう。

「口を閉じたときに、舌の先端が上の前歯の根元の約1㎝内側(のど側)についているのが正しい舌の位置です」

 これが、下の前歯の内側や歯肉についている人は舌の力が弱く、口が開きがちになり、口呼吸につながるという。

「気がついたときに口を閉じ、舌の正しい位置を意識して。舌の力が弱くなると飲み込みが悪くなり、高齢者に多い誤嚥性肺炎の原因にもなりますので、40代、50代のうちから舌の正しい位置を意識するのは重要です」

 また、舌が正しい位置にない人は、顔周辺の筋力低下も関係しているという。特に今井先生が指摘するのが、コロナ禍の影響だ。以前のように人と会って話す機会そのものが減ったうえに、長期にわたるマスク生活で、表情を作ることなく日常生活を送ることができるようになった。このことが顔周辺の筋力低下に大きく影響しているという。上のチェックリストにある《口を閉じたときに、梅干しのような膨らみとシワ》は、口を閉じるときに使う筋肉だが、本来はこの部分の筋肉を使わずとも口は閉じられる。これも舌や顔周辺の筋力低下が影響しているわけだ。

 起きている間は鼻呼吸なのに睡眠時には口呼吸になっている人も少なくない。そこで睡眠時に有効な手段が今井先生おすすめの口にテープを貼る方法だ。

超カンタン!マウステープの貼り方のポイント
超カンタン!マウステープの貼り方のポイント

「マウステープ健康法は、即効性があります。睡眠時に鼻呼吸に変えることで、まずは体調の変化を感じてください」