飼育の難しさからペットを遺棄するというケースはこれまで日本で幾度となく繰り返されてきた。今はショウガラゴがブームと言われているが、過去にあったブームには、悲しい結末が……。
「アライグマがアニメの影響などでブームになりました。しかし飼いきれなくなり遺棄されるケースが増加。生態系への影響や農業被害もあり、結果的に今は外来生物法の“特定外来生物”に指定され、駆除される動物となってしまいました。
飼育には責任が伴いますが、先のことまで考えて飼う人がどれだけいるのか。もちろん覚悟を持って飼育されている方もいると思いますが、テレビなどを見ていると、“野生動物も気軽に飼える”というような雰囲気がつくられている印象です」(浅川さん)
メディアからの誤ったメッセージ
“かわいい”という人間のエゴで始まったブームが、人間のエゴにより“殺される”対象に……。かわいいは、多くがテレビなどのメディアとSNSで消費される。前出のショウガラゴは夜行性なのだが、明るいスタジオに連れてこられることも多々。山梨さんは、
「スタジオにいたわけではないので一概には言いづらいですが、慣れていない場所に動物を連れていくと、それ自体が動物にとってストレスになります。例えば夜行性の動物にとって明るいところは活動しやすい環境ではない。そういう場所に連れていく、そういった姿を見せるということは動物のストレスだけでなく、見ているほうに誤解を生むことにもなりえます」
気遣いのないメディア……。前出の浅川さんも、
「かわいい、癒されるという発信をされると、受け手はその部分を強く印象として受けると思います。ただそれだけではない側面というものが動物にはあります。
以前、テレビ番組の影響でカワウソがブームになりました。カワウソは、自然に生きる野生動物です。ペットとしての飼育が非常に難しい動物なのですが、かわいい、犬・猫のように飼えます。散歩もできますというような映像やメッセージが繰り返され、“ペットとして飼える”という認識が定着してしまったところがある。結果的にカワウソは、密輸が相次ぐことに」
そしてテレビ局はこれらを“商売”にも……。
「地方局を中心にエキゾチックアニマルの展示即売会や展示イベントを開催していることも問題だと思っています。本来、野生動物飼育の問題点を指摘しなければいけないマスメディアが、密輸でなければ手に入らないような動物までイベントで扱っています」(東さん、以下同)
昨年ある地方局が開催した展示イベントがあった。
「ムササビの一種である“オオアカムササビ”が展示されました。しかし、厚労省の輸入届出制度が始まった'03年以降、業者が仕入れたという'18年まで輸入実績がなく、繁殖例が世界的にもあまりない種のため、密輸の可能性が高いと思われます。
ほかにも密輸に直接関わっているような店が、テレビ局が開催する動物の展示即売会に出店しているのは本当におかしい。局側に指摘したこともありますが、出展が続いている現状です」
SNS投稿やテレビ露出によって“イイネ”が生まれ、需要が高まる。結果密輸が増加、必然的に購入者も増加、するとSNS投稿も増加……。そしてそれは最後に悲しい結末を迎えることも。