使ってよければ購入する『体感販売』を考案
「馬油シャンプーに限らず、炭や柿渋などの自然派素材を使った弊社のアイテムはすべてまずお客さんに使ってもらいます。それでよかったら購入してもらう『体感販売』という形態をとっています。購入者の期待に沿えるかわからないものを販売するより、まずは使い、気に入ったら買ってもらう、というのが社長の考え方です」
これは同社の東村清代表取締役社長が35年前に考案し、始めた日本初の営業スタイル。
「パッケージの情報だけで購入し、使ってみると思っていた使用感と違うことがよくあります。ですが、うちの商品の場合は、アメニティとして展開しているホテルや旅館で使い、気に入ったら同じホテル内の売店で購入できるようにしています」
ユーザーは使い心地を納得し、購入できる。馬油シャンプーが長く愛される理由は「顧客を満足させたい」と取り組む商人魂の表れなのだ。
東村社長が考えた『体感販売』は、ビジネスモデルのひとつとして馬油シャンプーに限らず、宿泊業界内でさらなる広がりをみせている。
「ドライヤーやマットレスなども同様です。購入を検討していても使用感を試すのは難しい。ですが、宿泊時に使い、気に入れば購入するきっかけにもなる。宿泊施設は企業にとっても販路を広げるチャンス市場でもあるんです」
そう説明するのは旅行ジャーナリストの村田和子さん。
現在宿泊施設のアメニティ事情は大きな変化を迎えているという。
「バブル期のハイクラスホテルでは『ブルガリ』や『エルメス』など海外のブランドコスメのアメニティを用意、宿泊時のステータスにもなっていました。1990年代はそれらが各部屋に個包装で置かれていました」(村田さん、以下同)
もったいなくて使えず、お土産として持ち帰ることも珍しくはなかった。大掃除の際に未使用のブランドアメニティが大量に発見された、なんてことはよく聞く話だ。
「今は高級ブランドより、肌への優しさを考えたアイテムが注目され、自然派素材を使ったアメニティに移行する傾向があります。『ロクシタン』や国内なら『POLA』なども人気です。それに環境への配慮も欠かせません。SDGs(持続可能な開発目標)の観点と経費削減のため、据え置きボトルタイプのアメニティへ切り替える宿泊施設が増えています」
個包装されたアメニティは『レディースプラン』などの特典となり、宿泊先を選ぶ際の決め手になることも。